温泉に入った後、僕が向かったのは長野市街。
市街を突っ切った山の上に、今回の旅の目的地の1つがあります。
今回は戸隠山へ登りに来ました。
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標高1,904m。北信五岳の一峰。日本二百名山。
断崖絶壁「蟻の塔渡り」を始めとした危険箇所が多く、
スリリングな鎖場や切れ落ちた崖をルートに含み、滑落死亡事故も多数発生している。
登山難易度を表す信州山グレーディングでは
A~Eの五段階評価中Dに位置づけられる。
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前日の夜10:00から森林公園で寝たら、怖すぎて寝れなかったり、
日付が回ったので有料駐車場に向かうも腹が痛すぎて下のトイレに向かったり、
トイレ場からの星が綺麗だったり色々ありましたが、
寒すぎてその時の記憶が全部虚ろです。次から車中泊に毛布持ってこう。
5:45 戸隠神社奥社入口。
戸隠山の登山道入口は奥社のすぐ脇にあります。
奥社はここから40分ほど歩くと到着。
お茶を飲みながらゆっくり杉林を歩いていきます。
日本神話に馴染みのない方でも、
天照大神(あまてらすおおみかみ)と岩戸の話はご存知ではないでしょうか。
天照大神には兄弟に須佐之男命(すさのおのみこと)と言う暴れん坊がいたのですが、
須佐之男の横暴に怒って、天照は天岩戸(あまのいわと)と言う洞窟に籠ってしまいました。
太陽神の天照がお隠れになったので世界は真っ暗闇になり、疫病や不作が続きます。
そのままだと世界が滅びてしまうので、八百万の神様は色々試して
天照に岩戸から出てきて貰おうとしますが、上手く行きません。
そのうち、舞を踊って皆で囃し立てていると、天照は興味を持ち、
岩戸を開けて様子を伺います。
天照が身を乗り出した時に、力持ちの天手力男神(あまのたぢからおのかみ)が
岩戸をこじ開け、また世界に太陽が戻りました。
その後、扉は手力男神によって、「取り投げさせ給へば、信濃国の戸隠ヶ嶽にぞ着き給う」と伝えられ、
戸隠山はその時に出来たとも言われています。
最初に待ち構えるは急峻な登りです。
箱根の明星ヶ岳を宮城野側から登った時に似た感触を受けました。
そこまで距離はないのでペースを気持ち落とせば難も無いです。
とりあえず急峻な箇所は登り終わって、尾根に出た辺り。
切れ間から緑、赤、黄、青、灰 カラフルな風景が覗けます。
映ってるあの山まで行くことになろうとはこの時の僕は露知らず。
屏風の如き岩肌の直下。
いかにもポロポロ崩れそう。
僕はこんなところ、ハーケンが刺さってようが御免被ります。
一通り登り切った後に振り返った先には、
朝日に照らされた飯縄山。
早朝登山の醍醐味ですね。
こういう風景が見たくてやってるところあるよね。
ここから少し落ち着いた道。
百間長屋。オーバーハングした岩壁にはお地蔵さんがいます。
誰が持ってきたのでしょうかトチの実が供えられてました。
百間長屋を進んだ先にある西窟。
鎖のある場所から10mくらい登ると祠があるらしいです。
話に聞いただけですよ?試されて万一が起きても僕は知りません。
ここまで登山道から約1時間。
西窟を過ぎるといよいよ戸隠山の本番開始です。
まずは20mの鎖場。
高度感はありますがホールドはしっかりしてます。
スマホを構えながら登る図。
案内にも「いつも湿ってる」と書いてある岩肌。
今回はそうでもなかったですが、戸隠の石は濡れるとズルズル滑るらしいです。
あと浮いて取れてる石がありました。風化してるのか?
上る際には三点支持を入念に。
「こりゃピストン出来ねえ・・・。」
登ってくる人も考えたら不用意な真似はできない。
つまり縦走路を歩くこと必至。
他県に来ると、こういう丹沢では見ないような花も見られるのが面白い。
ちなみにこの山系にはトガクシショウマという固有種が自生しています。
まあ6月とかが開花なので、もう見られません。残念!
その後も数回鎖場を超えて行くと、いよいよ核心部。
胸突き岩。
斜度70度、15mを鎖で登ります。70度って言うと、
剱岳の悪名高いカニのタテバイの平均斜度がそれくらいだと聞きますね。
後続の為に落石しないよう細心の注意を払って登るのでペースは落ち気味。
逆にこれ後続だとヒヤヒヤすんね。同じ時間帯では僕が一番乗りだったので逆に安心でしたが。
胸突き岩を超えると、とうとう見えてきます。
蟻の塔渡り。
画像で伝わるでしょうか、切れ落ちた断崖が。
不動沢(左)側は滑落すれば150m以上真っ逆さまです。
戸隠(右)側は不動沢ほどではないものの、100mは優に超えていそう。
滑落ではなく墜落、と言われる所以がここにあるのでしょう。
落ちれば死は免れない足幅50cm距離25mの道を向こう側に辿り着く。
なかなかに緊張します。覚悟はしてたけど。
西岳の方は朝日に照らされ、幻想的。
こんな風景見ちゃったら黙って引き下がれないよなあ。
というわけで渡ります。
這ってでも行けますし、鎖で斜面をトラバースするエスケープルートもあります。
僕が思うにトラバースした方が怖いと思うんですが大丈夫なんですかね...。
全部歩いていけるかなと思ったけど、
蟻の塔渡り25mの最後の5mは特に剣の刃渡りと呼ばれる細い足場。無理でした。
恐怖への敗北。でもそれでいいよ死ぬよりは。
ということで対岸、八方睨に到着しました。ガ ス 。
この八方睨から先ほど見えた本院岳・西岳へのルートがありますが、
戸隠山がかわいく見える恐怖感とのこと。
人もいないし落ちたら本当に見つけて貰えない。
ここから先は戸隠山の山頂までなだらかなアップダウンですが、
絶壁の尾根を登っているので、相変わらず危険地帯。
絶壁っていうことは、絶景ってことなんですよねえ。
たまらないね。登った分のご褒美。
左側に見える深緑の線が、通ってきた奥社の杉並木ですね。
右に見えるは鏡池。
ガスが良い感じにかかり、鏡池が本当に鏡に見えた瞬間。
8:25 戸隠山山頂。
あっという間の2時間でした。これはハマるわ。
山頂は展望があんまりよろしくないと聞きましたが、結構良いじゃない。
ガスってるけど。
行ってみたい・・・。
一通り休憩し、さて戻りますか...。ということで、ここから縦走路です。
朝見えた屏風の山、九頭龍山を通り、高妻山への分岐を降りて行くルートです。
ここから暫くは危険箇所も薄いので、花を見る余裕も出来る。
結構枯れてたけどリンドウの開花時期はもう過ぎたのかな?
名前が分からんがかわいらしい。
戸隠山~九頭龍山は小ピークが何度も続く、起伏に富んだ縦走路です。
登っては降り、登っては降り。
だから九頭龍って名前になったのでしょうか?9つも登ったかは定かではないけど。
9:30 九頭龍山山頂。
九頭龍山の展望も綺麗。
戸隠山でも少し感じましたが、九頭龍山近辺ではますます獣臭がしました。
例えるなら生乾きの雑巾を鼻先に当てられてる感じ。
あの匂いがクマなんですかね?獣臭が強い動物って言うと、タヌキとか?
丹沢でほとんど嗅がない匂いに、「え、俺臭い?俺の体臭?」ってなって不安に駆られました。
10:10 一不動避難小屋。こんなガッチリした避難小屋初めて見た。
古くの山岳信仰によるものでしょうか。
ここでお腹も空いてきたので鮭おにぎりを食べて体力回復。うめえ。
ここから分岐を降りて、戸隠牧場の登山道へと下山します。
麓に見えてる黄緑が牧場です。
この登山道はかなり辛い。
元々沢なのか、ガラッガラの足場は注意深く下りないと足を捻ります。
これ登ってくると思うと高妻山は歯ごたえあるなあ。
水場、氷清水。
氷のように冷たい。高妻山は先程の不動小屋で1泊する人もいるみたいですし、
ここの水場は貴重。
水場や岩肌から染み出した水が集まり滝を作る。
こういうのがね、僕好きなんです。
目に痛い程のビビットカラー。
鎖は続くよどこまでも。
手前の草むらならまだしも、奥側で滑ると思うとひやひやするね。
滑滝。
この鎖場は怖かった。
沢でツルツルして滑るので冷や汗物です。
この後も石を足場に渡渉したり注意深く歩かないとズッコケてしまいそうになるので、
結構危険が伴うポイント。
水の流れも穏やかになる頃には、道も落ち着いてきます。
また入口のようにトチの実がちらほらと落ちてるのを見ながら歩いていると、
戸隠牧場登山道入口に到着。
牛糞踏みそうになった。あぶね!
見たことありそうで見たことないチョウ?ガ?どっちだい君は。
牧場には牛さんは見られませんでしたが(休日は牛舎にいるんかな?)、
降りていくと馬がいました。手を出すと噛まれるらしい。
カフェ・フルーリー。
牧場ソフトクリームが食べられる牧歌的喫茶店。
このまま降りていくと戸隠キャンプ場のバス停があり、
奥社経由のバスが発車しているのですが、
目の前でバスが出発していきました。あああああああああああぁぁぁ…。
このまま炎天下で待つのも癪なので、片道2km程度、20分もあれば余裕。
歩いて奥社入口まで向かうことに。
12:50 奥社入口到着。
ということで7時間のスリル満点の山行が終わりました。
戸隠山いいですね、書いてる最中にまた行きたくなっちゃった。
この後は車で休憩して、鏡池に行こうと思ってたのですが3連休最後の日、物凄い人だかり。
体もだるいし眠いし混んでるし、何が足りないってカロリーが足りない!
ということで車を走らせ蕎麦を食べに来ました。
そば処千成。
大盛ざる蕎麦。うまいぞここの蕎麦。
疲れた体に喉越し爽やか、
弾力があって歯切れもいい、久々にうまい蕎麦食べた気がします。
お通しで出てきた蕎麦団子も、そば湯と一緒に食べるとほろほろと解けて美味しい。
満足して戸隠を後にしました。よかったぜ戸隠。
出た後に「あ!忍術習うの忘れた!!」と後悔しました。
いつか螺旋丸の練習しに行きます。
温泉は川中島温泉テルメDOME。
露天風呂でテレビ見ながら壷湯できるし。結構長湯しちゃった。
このまま居たら気持ち良すぎて一生長野から抜け出せなくなるので、
何とか気合出して長野ICに乗って、帰路に付きました。
ということで、2泊3日の長野旅行が終了しました。
自分の行きたいところ、したいことが出来て非常に満足した連休になりました。
長野は渋温泉とか3月にも行ったんですが、観光にはベストな県だなと思いました。
ということで、また次の山でお会いしましょう。ばーいばい。