アウトドアと飯のあれ

神奈川→富山在住のアウトドアと飯と旅行のあーだこーだ

2019年5月2日 南木曽岳(蘭登山口)

我慢?無理。

 

令和初日、寝正月ならぬ寝令和を迎えていた2019年5月1日23時05分25秒、

脳が山に支配されました。

即座にパッキングと道中の弁当の用意をして、車に乗り込む。

今回向かうのは南木曽町中央アルプスの名峰、南木曽です。

 

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南木曽岳。標高1,679m日本三百名山

御嶽山木曽駒ヶ岳と共に古くから修験の対象とされた木曽の三岳

木曽における主要な登山対象の1つで、

花崗岩で構成された巨岩が立ち並び、展望台から御嶽山中央アルプスの名峰を望める。

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神奈川から南木曽町までは下道で約300km、片道6時間の運転の旅です。

甲府諏訪のあたりが一番長く感じましたね。あまり距離はないのだけれど。

写真は木曽入りする前の南箕輪村からの写真。

とても嫋やかな山。名前は何だろう。


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道中2時間仮眠して、8:15 南木曽岳駐車場に到着。

道の途中にある(あららぎ)キャンプ場はテントが乱立、盛況でした。

キャンプ何年やってないんだろう。結局去年もなあなあでやってないんですよ。

朝からベーコンが食べたいと思う僕を、鳥居がジーっと見てた。

 

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フモトスミレ

登山口は駐車場から少し歩いた先。

南箕輪村の方は天気が良かったのですが、木曽に入ってからは雲がかりが激しく…。

少し曇り気味。こりゃ景色も期待しない方が良さ気かな?と思っていました。

 

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金時の産湯

南木曽岳は金時伝説のある山としても知られ、別名を金時山と言います。

山岳に囲まれた地形上、雨が降る日が多く泣きびそ山という別名も持ち

地元で蛇抜けと呼ばれる土石流が、その昔この山から起こったので

転じて南木曽岳の洞窟には恐ろしい山姥が住むと、江戸時代には囁かれたとか。

近年もこの山から蛇抜けが起こり、多くの痛ましい被害が出ました。

 

南木曽町南木曽駅から中山道を北へ歩くと、

ほどなく小さな沢にかかる橋があります。

その橋名板には、「蛇抜沢」「蛇抜橋」と書かれています。

”蛇抜け”とは、土石流(災害)を意味し、歴史的に大きな災害を

たびたび経験してきた木曽地方の人々には、よく知られている言葉です。

                                 (長野県『木曽郡南木曽町読書地区蛇抜沢』)

 

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イワウチワ

しかし雨が多いということは必ずしもデメリットではなく、

裏返せば花や木や苔の成長も盛んであり、南木曽は非常に自然豊かな森林を携えています。

 

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バイカオウレン

この山とは少し逸れますが、木曽の昔話でも。

木曽は今でも継がれる、非常に良質の建築材を特産とする森林の地。

古くは多くの杣人(そまびと。林業従事者)が山と共に生活していました。

ですが戦国の世が閉じた江戸時代、多くの諸大名や幕府が諸所の街並みの建設や造船に

この地のヒノキを欲したために、木曽の山林は荒廃の危機に瀕します。

 

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当時この地を治めていた尾張藩は木曽の山林を荒れさせないよう、ヒノキの伐採禁止令を布告。

またヒノキに良く似たサワラアスナロ、貴重な樹木であったコウヤマキ

加えてネズコを合わせて木曽五木と名付け伐採を厳重に禁じる、

強烈な山林保護政策を出しました。宝永五年(1705年)の話です。

 

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ショウジョウバカマ

この掟を破る者には死罪が下り、『木一本首一つ 枝を落とせば腕を斬る

と恐れられ、山で生活していた杣人の経済体制が崩壊します。

端から見れば負の側面を持つ政策ですが、これにより木曽の自然は回復し今日に至ります。

 

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杣人からすれば苛烈な出来事だったのでしょうが、実際それくらいしなければ

経済成長の片隅で起きる自然破壊は止められないのかもしれません。

多少の劇物を飲まなければ理想は成立しないという話は、昨今でも通じるところがありますね。

 

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そんな話をしていると、山頂も間近。コウヤマキの森からは霧が立ち込めてきました。

道中少し晴れ間はあったものの、景色は無理かな…。

まあそんなことを考えていても仕方ないので登るわけですが。

 

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コウヤマキは名前の通り、高野山に多く自生するマツ目コウヤマキ科の常緑針葉樹で

悠仁親王の御印章(シンボルマーク)にはコウヤマキが選ばれています。

 

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山頂まで1時間半~2時間、標高差700mという割に、かなりの距離を感じました。

歯抜けの濡れた木道で緊張しながらゆっくり進んだからかな?

 

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10:00 南木曽岳山頂。

山頂は樹林で囲まれて展望なし。

あまり広くないので、先に登った人に追いついちゃって少し渋滞気味。

ここから少し進むと展望台があるみたいなので、そちらに進んで休憩することにしました。

 

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途中からは麓の柿其(かきぞれ)渓谷が見えるらしい。

双眼鏡欲しかったな。安物で良いから買おうか。

 

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展望台には避難小屋とトイレがあります。

ヤマレコを見ると数日前に整備の人達が登られていました。

全体的に笹薮に囲まれた山なので、夏は半袖よりもタイツや薄手長袖の方が良いかもしれません。

当日は15度だったけれど、マウンテンパーカーなんて着てくるんじゃなかった。

汗かいちゃったのでザックに仕舞う。

 

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ラーメンとおにぎりを小屋で食べていると、窓辺から日差しが見えたので外に出る。

晴れたー!

さっさと下山しなくてよかったです。

 

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笹薮と青空は映える。
寒さも引き、この日は急に気温が上がりました。

起きるのが少し遅かったのですが、却ってそれが功を奏したような。

 

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展望台からは中央アルプスの面々と、左には雪の残った御嶽山が見えました。

のんびりするのも良かったですが、少し事情があるので下山することに。

 

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来る前は「南木曽町の名を冠する程の山、どれほどだろう」という気持ち、

一方登っている最中は、ストイックすぎて魅力を感じる暇がありませんでしたが、

登り終わって見ると、木曽を代表する堂々たる山の所以を感じました。

 

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降り先すぐにある摩利支天展望台から南木曽の山の面々が一望でき、

ここが一番お気に入りだったかな。

中央奥に見える台形の山、あれは恵那山かな?

 

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秀峰という言葉はあまり好きではないのですが

(何を持って秀峰と言うのか、秀れていない山があるのかという理由)

山の景色をゆっくり眺めるという点においては、久しく充実した気分になりました。

1ヵ月ピーク踏んでないんだからそりゃそうか。

 

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下山中は写真を撮る暇がありませんでした。写真は降りて50分経過したところ。

というのも、登りで通った以上の鎖場、階段、木道の数々で疲労困憊。

恐らく雨の多い南木曽岳を安全に登山するための、山岳整備の方々の努力の賜物なのでしょう。

しかし疲れるのは疲れるんじゃ。

 

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雨の翌日に登るもんじゃないなと道中は感じていましたが、

登り終わって見れば、雨こそこの山の真骨頂なのだなと。

僕は一番良い時期に登ったのかもしれません。

また南木曽に来た時には、足を踏み入れてみようか。それとも別の山から見てみようか。

 

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帰り道の水は淡く透き通っていて飛び込みたくなりました。

この額付(ぬかずき)が行き着く先が、以前見た蘭川。

 

新緑の夏、あの翡翠の清流を形作る山に登れた、充実感のある山行となりました。

 

次回に続くよ。