五箇山相倉合掌造り集落を後にして、午後から山に向かいました。
急に禁断症状が出たんですよ。怖いね。
ということで30kmほど離れた医王山(いおうぜん)が目的地です。
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医王山。金沢と富山に跨る山塊であり、最高点は奥医王山の939m。
白山の泰澄が開山した薬草と花々の名山であり、
麓にはスキー場も設けられ、地域に根差した里山としての側面も持つ。
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『いおうぜん』と読むのです。
中国・四国で『せん』『ぜん』と読む山が多いのですが、(蒜山、伯耆大山)
関連性は知らなーい。
今回向かうのは最高点の奥医王山ではなく、医王山と指されることが多いピーク
白兀山(しらはげやま)を目指します。
麓にはスキー場イオックスアローザがあるので、馴染みのある県民も多い。
イオックス自体は2,3回しか行ったことないなぁ。飛騨のが近いし。
更に語らせてもらうと、
医王山は僕が最も好きな作家の1人、泉鏡花の『薬草取』の舞台でもあります。
鏡花は石川出身なので、馴染みもあったのでしょうか。
たまたま未読だったのですが、鏡花特有の歌うようにリズミカルな文体に
夢中になって、前夜に全部読んじゃいました。
それがないと凌げませんほど、水の少い処ですから、
菖蒲、杜若、河骨はござんせんが、躑躅も山吹も、
あの、牡丹も芍薬も、菊の花も、桔梗も、女郎花でも、
皆一所に開いていますよ、この六月から八月の末時分まで。
その牡丹だの、芍薬だの、結構な花が取れますから、
たんとお鳥目が頂けます。まあ、どんなに綺麗でございましょう。
(泉鏡花『薬草取』)
『水不足』と形容される割には滝で涼みも出来る、緑豊かな山です。
正確には石川の戸室山の方から登り詰めたとありますので、
そちら側は沢も少なく、小説にあるストイックな山登りとなるかもしれません。
沢直上の幅狭の鎖場を縫うように、慎重に歩きます。
(※岩質と苔の性質上、雨天時は滑落の恐れがあり非常に危険です。)
標高は決して高くありませんが、侮れない難路が幾つもあります。
ルートを吟味することで、ビギナーから熟達者まで楽しめるのじゃよ。
キノコの生える倒木を屈んで越えると間もなく分岐があり、今回の核心部です。
トンビ岩直下岩壁!
高低差100mを一息で登る、岩峰が少ない富山屈指の鎖場。
これが楽しみで来たのです。
鎖を使わずガシガシ登れるので、岩場での足運びを鍛えるのにうってつけ。
よいしょ、よいしょ。
誰もいない鎖場は気が楽でいいなあ。
ちなみに僕が歩いているトンビ岩周回コースは
一昔前、石川の小学生の遠足で度々登られていました。
現在では危険性との兼ね合いで、集団で登られることは無いそうです。
岩と鎖に格闘すること15分弱、絶景のトンビ岩に到着しました。
てっぺんに登った景色は格別。
上からは分岐を進んだ先の大池も望めました。
軽い森林浴で来るなら、そちらに寄って湖畔で休憩するのも一興ですね。
アミノバイタルを飲んで出発。久々に岩と戯れました。
もっとアクセスが良ければいうこと無しなんですけどね。
ここから白兀山までは40分程歩くわけですが、これが前日の雨で泥濘みが凄く…。
虫はウナコーワクールを持ってきたからか、全然苦にならなかったけれど。
6月からはベニバナイチヤクソウの開花時期ですが、早すぎたようですね。
まだ一輪たりとも見かけませんでした。
道中はニガナが多く見かけられました。
ちょこちょこ切れ間があって、ようやく白兀山に到着。
ベンチと展望台があるだけの慎ましやかな山頂ですが、
少し手前には開けたスペースもあったので、行楽シーズンはそこが混むっぽい。
そして下山道中で『あるもの』を見かけました。
ギンリョウソウ!
去年は見かけなかった。梅雨時期外して登山してたし。
帰りの道中で思いがけず、多くの株を見かけました。
白いレースのような衣を纏って、目立ちたがり屋さん。
梅雨時期に見たかった花の1つを収められて良かったです。
間もなく車道に降り、まずは一安心。
眼下に広がる砺波平野の散居村を眺めて、車まで戻ることに。
で、僕の悪い癖が祟ったのか、道を間違えました。
車道をえっちらほっちら歩いて、降り口を間違えたことに気づいたのは1時間後。
今思うと、何故間違えたのか意味が分からない…。
自他ともに認める方向音痴で、3時間車道とお付き合いをしなければならず、
帰ってきた頃にはヘトヘトでした。
岩場よりも疲れた。(^ ‿ ^)なんやねん。
医王山、思ったよりもボリュームがあって楽しかったです。
また秋の花のシーズンに是非立ち寄りたい。
今度は別の道でも歩こうかな。
それでは。