アウトドアと飯のあれ

神奈川→富山在住のアウトドアと飯と旅行のあーだこーだ

時鳥と薯の小話

やぁ。

梅雨が晴れたと思ったらバケツひっくり返したような雨続き。

川の近くなので放流のサイレンが夜中ずっと鳴っています。

 

こんなジトジトしている雨の夜には、山の鳥も羽を休めて寝ていることでしょう。

ということで1つ富山の民話でも。

 

f:id:akiranngo:20190630171618j:plain

 昔々、越中のある山奥に、『いも鳥』という親子の鳥がいた頃のお話です。🍠🐤

 

いも鳥は薯(山芋)が大好物で、薯のできる季節になると山中を飛び回り

シャクシャクとした触感の、とろけるような味に舌鼓を打ったものです。

雛鳥は、毎日お母さんが持ってくる薯が楽しみでした。

 

f:id:akiranngo:20190630172607j:plain

大きくなるにつれ、お母さんが持ってくる量では満足しなくなってきた雛鳥。

自分で山の中に入って薯を取ろうと頑張りますが、これがうまくいきません。

 

それもそのはず、薯は土の中に埋まっているもの。

お母さんも、実は毎日大変な苦労をしていたのです。

 

f:id:akiranngo:20190703174141j:plain

ある日薯がなかなか取れず、やっとの思いで持って帰ってきたお母さん。

雛がかじりついたそれは、今まで食べたどれよりも美味しく感じました。

一日中飛び回ったお母さんは、ぐったりとして寝込んでいます。

 

雛はふと考えます。

「どうしてお母さんはこんなに上手に薯を取れるのだろう。

もしかしたら、僕に食べさせているのはちょっとだけなんじゃないか。

お母さんはもっといっぱいの薯を食べているんじゃないのか。」

 

f:id:akiranngo:20190630172026j:plain

お腹のすいた雛はいてもたってもいられず、お母さんのお腹を切って

お腹の中の薯を食べようとします。

しかしお母さんのお腹に入っていたのは、泥だらけの木の根っこばかりでした。

 

自分のしたことに深く後悔した雛は、『オッカアサン、オッカアサン』と

今でも鳴き続けているのです。

人々はその鳥のことを、いつしか『ホトトギス』と呼ぶようになりました。

 

f:id:akiranngo:20190630164946j:plain

心のひがんだ兄は盲目であった。

妹の掘って煮て食わせた山の薯が、あまりに旨いので

かえって邪推をして、妹はもっと旨いのを食っているだろうと思った。

そうして包丁を以て親切な妹を殺したところが、それが先ず鳥になって

ガンコ・ガンコ(カッコウの鳴き声)と啼いて飛去ったという。

ガンコというのは多分頭の意味で、薯の筋だらけの悪い部分をいうのである。

即ち私が食べていたのはガンコだガンコだというと、

さてはそうだったかと悔い歎いて、盲の兄も鳥となり、

ホチョカケタと啼いて飛び、今でも山の薯の芽を出す頃になると、

こうして互いに昔の事を語るのだというのである。

                                                                            (柳田國男『野草雑記・野鳥雑記』)

 

f:id:akiranngo:20190630222414j:plain

欲深い人が命を落とし、ホトトギスになった話は全国各地で見られます。

ホトトギスは夜中でも良く鳴くので、

夜遅く起きてると、夜にも休めないホトトギスになるよ』という

子供への教訓だったのかもしれません。

 

次に彼らの声を聞く時は、少し悲しい気持ちになってみて下さい。

 

 

 

ちなみに僕は山芋食べられません。口の中がイガイガするよ。

おわり。