前回の続き。
浄土山に到着してようやく岩峰が見えてきました。
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龍王岳。標高2,872m。
古来より龍王は仏教を守護する善神であるとされ、その通り浄土山の傍で佇む岩峰。
気軽に辿れる西稜や、クライマーに人気のルートも持ち
室堂近辺では貴重なマルチピッチクライミングの場として親しまれる。
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…の、前に、ちょっと寄り道していきましょう。
というのも、少し見てみたい場所があって、それが今回の目的でもありました。
国内のバリエーションルートを網羅した『日本登山大系』では
龍王岳についても触れており、
龍王岳
実は、龍王岳の岩場の真価は南面にこそあるのだが、
適当な観望地がないこともあってクライマーの視線が集まらなかった。
ために、まだ満足な概念図さえ発表されていない。
(『日本登山大系5』)
鋭いリッジが連なる、いわゆる南面フランケ([Flanke]側壁)こそが
龍王岳の本領であると述べています。
この南面壁は編纂の頃に何度かの登攀記録があったものの、
アクセスの不便さからかクライマールートとして伸びることなく今日に至るとか。
残置は殆どなく、ほぼ登られていない稜線は浮石の巣窟。
しかし自らルートを模索して辿っていく面白さがあるとも述べられています。
今回は勿論このルートに登るわけではありませんが、
話を聞いてとても魅力的に感じまして、少し見物しに行こうと思ったのです。
五色ヶ原へ向かう鬼岳のコル付近、8月下旬未だ残雪のある辺りで見られます。
こちらがお目当ての南面壁。
スケールはそれほど大きくありませんが切り立った岩壁が屹立しています。
岩が好きな僕としては、竜の背のようなアレートは大好物。
開拓されていない道、まさにロマン!
暫く眺めて休憩して、浄土山へと戻ることにします。
片道10分ほどですぐに到着。
山頂はそこそこの広さがあり、座って一休み。
…ん?あちらの岩峰に何やらいるようです。
少し覗いてみると、
あっ!
今日は4羽のヒナとお出かけ中です。お散歩かな?
いやぁ、1ヶ月で大きくなりますね。奥大日岳で見た時は手のひらサイズだったのに。
ライチョウの名前は、天敵の猛禽や野獣の目が届かない荒天時に良く動くことから
「雷雨に現れる鳥」という意味で付けられたらしい。
日本に生息するライチョウの約2/3が北アルプスに集中しているらしいです。
龍王岳山頂にて
— 成瀬晶 (@akiranngo_M) 2019年8月26日
ライチョウの親子連れ pic.twitter.com/c5mnF1Vsus
さて、良いものを見た気分のまま、次の目的地、雄山一ノ越へ。
およそ15年ぶりの再訪です。
振り返ると、背後からはもっこもこの雲が忍び寄ってきました。
龍王岳も煙の中に入ってしまう。
天気が優れない、そんな時には足元を見るのです。
イワギキョウは殆どが開花を終えて萎びてましたが、
それでも元気な数輪を見られて嬉しい。
青紫色ってすごい高山植物って感じがする…。リンドウもトリカブトもそうだし。
またこの道中には珍しいミネウスユキソウが開花していました。
登山者以外には聞きなれない名前かもしれませんが、あのエーデルワイスですよ!
『高貴な白』。白ってより緑色ですけど。
ちなみに以前初めて見かけたヤマハハコ、「あれ?」と思ったのですが
そう思うと顔つきも似てますね。
一ノ越に到着して、暫し御山谷を眺めながら休憩。
目の前には黒部ダムも小さく見える。
ここから東一ノ越を越えて黒部平を結ぶ登山道が続いているのですが、
景色がよさそうです。結構荒れてるそうですが。
御山谷からは龍王岳の東岩稜が見えてきました。
永嶋さんという人が今から90年前に初めて登攀したそうで、
まさに龍が空へと飛翔するような山容を望めるようです。
フリーで登れるとのことで、僕も今回向かってみようと思っていましたが
何かこの景色を眺めたらお腹いっぱいになっちゃって、次の機会にしときました。
はいはいいつものやつ。
食べたら雄山へ登ろうと計画していましたが、
下から行列と雲がかりを眺めていると、だんだん憂鬱になってきたので
良い頃合いですし今回は見送らせていただきました。
帰り道の懺悔坂は歩きやすい道ですが、
意外と注意していないと足をひねりそうで怖い。
オコジョとかいないかなと思ってましたが、人が多いと出てきませんね。かなしー。
15年ぶりの雄山再訪は未達という結果に終わりましたが、
立山を気軽に楽しめるこのコース、是非皆さんも歩いてみてはどうでしょうか。
僕もいつかは願いが叶う縦走が出来ればなと思います。
ちゃちゃっと足早に降りて、帰ったのは16時頃。
立山は比較的近いので、今夏中にもう1、2回は行きたいですね。
次はどこに行こうかな…?
それでは。ばい。