前回の続き。
4日目朝。1:00に寒くて目が覚める。
寝るときに気づいていたが、日中の寒さでシュラフが凍りついていた。
ナルゲンアイロンで乾かす気にもならずDASパーカを着込んで寝入ったが
寒くて仕方がない、というかエアマットが全く仕事をしない。
高い癖して寝心地は最悪。やはり普通のマットの方が寝るには便利だ。
流石にこの時間に起床して飯を食べる気にならず、雪を溶かしてお茶を作る。
温まって震えも収まり、そこから5時間熟睡してしまって6:00に飛び起きた。
Fさんに「6時に出発しましょう!」とか、昨夜どの口がほざいてたのか。
大急ぎで片しと用意を終わらせ、7:05 双子山へ出発する。
昨夜の降雪は20~30cmで、初日以来の小気味良く散るパウダースノーを楽しんだ。
尾根沿いは時折深場があるがワカンを出す程でもない。
樹林帯を抜けると一気に展望が開ける。
白木峰にも似た、いかにもテントを建てたくなる見事な丘が広がっているが
その分風抜けは凄まじいだろう。
ヒュッテから上もあまり良い幕営地は見当たらなかった。
双子山から大河原峠へ標高を落とすが、新雪と薄いトレースで時折腿まで食われる。
この辺は緩やかな下りなので雪溜まりになるのだろう。
しかしヒュッテは眼下に見える。幾らも落としはしないだろうと安心する。
大河原ヒュッテで大休憩してワカンを装着する。
結局使わず仕舞いかと思っていたが、最終日に活躍するとは。
しかし出だし以外は吹溜りがある程度だった。折角なので履き通すことにした。
こちら側は車を使わない場合アクセスが困難なのだろう、
新年の良い天気なのにすれ違う人は皆無だった。
喧騒の無い、自分達だけの雪と森、良い気分だ。
立ち枯れを縫うスノートレイルを闊歩していく。
森の向こうには一際輝く白い山が見える、最後の一峰、蓼科山だ。
ヒュッテのある将軍平へ飛び出すと、銀と青の世界が広がる。
蓼科山は麓の茅野と南方面以外で見ることがなかったので、
ここまで裾野が大きい山と実感したのは初めてだった。
一休憩入れて、急坂に入る。途中でワカンを外してアイゼンに切り替えた。
切り立つ斜面やハイマツに乗った雪に悩まされながらも、正午に蓼科の頂に立った。
この山はα6400を購入した頃に訪れた以来。もう2年半前か。
その頃に鳥居に寄っているので、今回はスルーさせて頂いた。
またご挨拶に伺うことにしよう。
歩いてきた道程を見渡す。明け方はまだあの森の中。
雲湧く中に双子山を遠望する。奥は小海の町だろうか。
そして南八ヶ岳に目を向ければ、編笠山が丸い帽子を見せている。
あの山からここまで歩いてきたんだという充実感に溢れる一瞬だった。
そしてヒュッテはやってなかった。ガセ情報を掴ませてFさんには申し訳なかった。
どうやら元旦だけ営業しているみたい。
さて、風も強いし大勢登ってきたので下山にとりかかる。
途中でタクシーを呼んで談話しながらスズラン峠へ予定より早く下り終えた。
タクシーの運ちゃんは早めに来ようとしたようで、間もなくFさんとお別れした。
「是非またどこかでご一緒しましょう」と滅多にしないLINE交換をして。
道中自販機に寄ってもらって富士見高原の車を回収した。(タクシー代13000円)
長野は富山よりずっと寒い。念の為サイドブレーキをかけず下ろしておいたが、
運ちゃん曰く「下ろさないと凍って大変なことになる」。
冬季縦走の際は気を付けよう。富山では殆ど凍らないので意識しないと忘れてしまう。
結果的に今回の冬季八ヶ岳全山縦走は大成功に終わり、1年半の靄が晴れた充実の山行となった。
だがパッキングの拙さ(そもそもザックが小さい)、細かい幕営技術の未熟さ、
メンタルの弱さ等の直すべき課題も明確に表れたと思う。
単独行ではどこかしらで心が折れていたかもしれない。
今回学んだことを次回以降の山行で改善していくことを心掛けたい。
そんなことを思いつつ、小淵沢で買ったネギ塩唐揚げとお握りを頬張って
小谷経由で帰路に着くのだった。