GWにはアクセスが格段に良くなり、場所次第で小屋営業もある北アルプス。
喧噪の前、人の気配の無い雪纏う山巓を心ゆくまでひた歩きたい。
そんな欲張りにとって比較的手の届きやすいのが北ノ俣岳です。
除雪終了点の和佐府橋~飛越トンネルまで6.2kmのヘッデンスタート。
もっとデブリでベコボコと思ってたら、意外と歩きやすい。
トンネルまで約2時間。尾根に登り上げれば有峰湖の展望が良好。
誰の踏跡もない雪原を気の向くままに。
夏季は沼地の如き登山道も、深雪で快適そのもの。
3シーズンは長靴必携。
夏に登山靴でこの山に来て四苦八苦した人は、是非冬に再訪してほしい。
蒼天貫く白嶺が際立って見える。笠ヶ岳だ。
何気に未踏の山。今冬の宿題の1つだったが来年に持ち越しだ。
さて、北ノ俣岳は見えてからまた長い。
傾斜は緩やかだが、歩いても歩いても稜線が近付かない。
ひたすら体力勝負な常念岳を彷彿とさせる。
これも稜線に出るまで長い、出た後も長い。
そういえば2022年は剱岳の頂に立っていない。
夏頃訪れたが、早々に体調が悪くなって200m登って引き返した。
1年に一度は訪れておかないと苦手意識が出てきてしまう。良くない。
鍬崎山も一度登ってから御無沙汰。ここも階段地獄で足が遠のいている。
雪がある時に一度再訪しようか。
寺地山から一度下って登り返す。
局所的に吹き溜まるが、ワカンを出す程もない。
9:00前 避難小屋に到着。
時間的に黒部五郎岳へ届くかもしれないが、明日の天気は微妙。
割り切ってここにデポして北ノ俣岳へ往復しよう。
巨大な翼にも見える見事な風紋の緩斜面を登って行く。
広く長い尾根をひたすら突き進む。思った以上の負担だ。
夏でもこの辺で草臥れる。
少しずつ標高を上げていくと、思わぬ先客との出会いが。
丸々としたライチョウはそろそろ換羽の頃だろうか。
2時間程歩いて稜線に突き出れば、まずは目に飛び込む薬師岳。
ここからの景色は凛凛しさがある。
水晶岳や雲の平も深く雪を羽織る。
テント一式デポしてきたことに若干後悔してきた。
ここで張れれば美しいアーベントロートのひと時を過ごせたろう。
山頂はすぐ近くだが、広がる景色に足を止めざるを得ない。
白と深い青の黒部源流に惚れ惚れする。
4月の頭ともなれば殆ど人の入らぬ所。
いつかこの時期に何泊かで歩き回りたいな。
槍ヶ岳も峰の奥に穂先を掲げている。
今年スキーを始めてみたが てんでダメダメ。山に持っていくには程遠い。
11:17 山頂に到着。
電波も通じるのでここで暫し休憩。
20分ほどダラダラしてるとガスも登ってきた、冷える前に下ろう。
北ノ俣の緩斜面はしばしば「スキー場」と例えられるが、
それも分かるくらい立派な広尾根だった。
もっとも、今日のカリッカリな雪質では足腰やられそうだ。
登るにはまたとないコンディションなんだけどな。
かつての富山の秘境、有峰。
数百年前にこの地に立てば、あの谷の向こうに薪炭の白煙でも見えたろう。
昔の山の景色はどうだったか。
誰かの紀行文では、西洋のピラーとも言われた密林帯。
白黒の景色を夢想しながら眺めるのも悪くない。
しかし本当に長い。緩いので尻セードもスピードは出ないし、
シェルがボロボロになるのはもっと御免だ。
ポリ袋持ってきてソリするのも一向かもしれない。
流石に純白に目も足も痛くなる頃、14時過ぎに小屋へ到着した。
テントを持ってきておいて何だが、寒いのも億劫だ。
暖かさは正義。快適なホテルに泊まるとしよう。
小屋で水を作ったり、置いてある登山ノートを読む。
この日の夕飯はエビラーメン。
体も暖まって、kindleで本を読んでいるといつの間にか寝入っていた。
続く。