前回の続き。
3:30起床。諸々パッキングして4:00過ぎに出発する。
嘘のような快晴無風。
樅沢岳は9割夏道。常念山脈のシルエットが浮かぶ。
夜の幕が上がり、目指す頂が見える時こそナイトハイクの醍醐味と思う。
こちら側の槍は太陽を背にしているので焼けなかったが、
双六に居ればそれは見事な朝焼けが見れたろう。
雪面は冷え込みで抜群の歩きやすさ、硫黄尾根には光は見えなかったが
やはりGWにも入山者がいたらしい。ボロボロの尾根は近くに寄ると一層威圧的だ。
今年の高温の影響か、夏の巻き道を使ってサクサク進む。
東面は何故ここまで溶けないのだろう。日当たりは良いはずだが。
稜線上は笠ヶ岳と鏡平が一層美しく見える。
昨日小屋泊りの先行者に追いつく。今日中に槍沢から帰るらしい。
細かなアップダウンを終えると奥丸山が近付いてくる。
中崎尾根との合流点、千丈沢乗越からいよいよ槍の肩へ登り詰めていく。
千丈沢は一見ドヘタな僕でも滑りやすそうな斜面に見えるが、
ボロい尾根が上にあるので地雷だらけだろうな。
岩峰を飛騨沢側に巻いて左上する。
高度感があるが日も当たり程良い硬さなので不安はない。
むしろ稜線が浮石だらけで辛い。落としたら飛騨沢を詰めている登山者に危険が及ぶ。
細心の注意を払って登り終え、尾根を乗越せば小槍の目の前に飛び出した。
ほっと一息。穂先は思ったほど人が居ない。まだ登山者は集まりきっていないようだ。
槍ヶ岳山荘はGWの間だけ仮開けし、再びサマーシーズンまで閉ざされる。
小屋でコーラを買おう!…と思ったがペプシしかないらしい。
CCレモンパイナップルMixがあったので一安心。
これは西沢渓谷付近でも夏季に売っていて、山の帰りにはとても美味い。
槍を見ながら乾いた体にブチ込む。あー、たまらんね!
2回目の穂先にも登る。
梯子の手前のくの字が硬いアイスになっていたので岩壁沿いにへつり上がった。
ウィペットだと流石に氷に刃が立たないし取り回しが面倒。
頂からは北鎌の厳めしい姿が白雪を纏って美しい。
人も居ない穴場の時間を堪能する。
ふと下を見れば、槍沢からの登山者も続々と上がってきたみたいだ。
2年ぶりの景色を瞼に焼き付けるようにして、名残惜しいが山頂を後にする。
下りもくの字で岩壁に寄る。
この時期は上り下りのルートの区別は無いので、余計混雑するかも。
流石に夏ほど人が来るわけでもないので、たかが知れているかもしれないが。
さて、肝心のテント泊だが現在11:00。
朝は雪がある程度緩むまで下るのは難しいかもしれない。
大体これくらいの時間になると思ったら、ほぼ丸一日いることになるじゃないか。
もしかしたら1日早めて下山できるのでは?
今から降りればひがくの湯で飯も食えるだろう。
唐揚げ、焼きそば、ラーメン、焼肉…あらゆる食の葛藤に勝てなかった。
カレーメシばっか食ってるのに、あと3食カレーメシは気が狂いそうになる。
結局テントを担いできたのに使う機会もなく下山を決めた。
これが散々後悔する判断とは知らずにこの時は呑気に滝谷ドームを眺めていた。
槍平から先は殆ど夏道で、日射高温で足も汗をかく。
処理を怠っていたので足の皮膚がふやけて割れまくった。
こうなると本当に痛い。歩くことすら億劫になってくる。
ようやく一息つける滝谷で水分補給し、避難小屋でテーピングテープを巻く。
その後も氷や雪のトラバースが断続して思うように夏道通しとはいかない。
白出沢出合の少し手前でようやくアイゼンを外して少しはマシになった。
穂高平小屋からが本当に辛い長さで、自分の浅薄な判断と
飛騨沢の長ったらしい砂利道に呪詛を垂れ流しながら歩く。
気付けば槍から6時間以上、薄暗くなる前の18:00新穂高に到着した。
見かねて駐車場まで送って下さった飛騨県警のお兄さんには感謝し足りない。
死にそうな顔になりながらひがくで山盛りの唐揚げ定食を食べ
翌朝まで神岡で爆睡してから帰宅した。
おわり。