前回の続き。
奥宮参詣は終えたが長い下りが待っている。
主脈から奥宮まで大した距離はないので、九割九分九厘九毛の参詣者は
この往復をするのみとなっている。
実際国師ヶ岳に訪れる際は奥宮にも寄り、信仰の風を感じることをお勧めしたい。
主脈合流。主脈上で最も登り易い山だが、全く人がおらず静かな朝。
林道川上牧丘線が冬開けしていないせいだろう。
この時期は山域中最も人が少ない穴場かもしれない。
頂で小休憩。
ようやく牛首ノタルから途切れていた電波が拾えた。
前述の通り大弛峠はまだ車が入れないが、大弛小屋は開いている。
一旦降りて補給するには登り返しが面倒。このまま先へ進んでしまおう。
砂地のご機嫌トレイル。
大弛の分岐先で10mくらいの残雪があったが、雪を見たのはそれきりだった。
やはりこの山域の雪解けはとても早い。
北奥千丈岳は一度来たかった山なのもあって今回のルートに含めた。
山域のスター金峰山・甲武信ヶ岳を両腕に抱きながら閑散としているが
立派に奥秩父の最高峰。
金峰山五丈岩の眺望は見事だ。
あちらも深い信仰がある山、今年こそ古道歩きで訪れてみたい。
フリークライミングのメッカ小川山の屹立した花崗岩に見惚れつつ石楠花新道を下る。
出だしは苔生す良いトレイルだが、次第に倒木が目立つようになってくる。
45分程で奥千丈岳に立つ。かつて沢山(さわやま)と呼ばれた目立たないピークは
今となっては沢山の倒木で埋め付くされている。
南面が特に凄惨な有様で、あまりの痛ましい姿に言葉も失うほどだった。
そして鋭利な枝で普段使いのロングパンツの裾を破いてしまい益々ブルー。
まぁ…裁断すればまだ着られるしいいか。
倒木エリアも静まり無心で下り続ければ、唐突に林道と合流する。
シラベ平で一息。この舗装をひたすら進めば昨夜の幕営地に合流する。
行程の半分を進んできたがまだまだ先は長く、石楠花は相変わらず見当たらない。
石楠花新道という名前は開削者の小野幸氏らが所属していた
「石楠花山岳会」に由来するようで、当時から黒木密林の覆う尾根だったとのこと。
軽い登りでゴトメキに着き、ここから大ダオまで緩い下りが続く。
Co2150m付近にて、2日間で初めて人に出遭った。
今日中に国師ヶ岳へ抜けてロードを走って帰るそうだ。
トサカへの道は鹿の気配が多い。とにかく鹿の痕を追いかけ回した2日間。
雰囲気は破風山～雁坂嶺にどことなく近い。
所々の倒木に腰かけて休む。流石に長くて疲れが出てるみたいだ。
踝を覆う笹を蹴払ってトサカを降りれば、大ダオの緩やかな笹原が見えた。
左手の眺望がようやく開けて早朝の国師ヶ岳が捉えられた。
あの頂から結構歩いてきたな…。
ここから黒金山までは大した距離も標高差もないのに、やけに疲弊していた。
稜線上は水が採れないので真夏日に歩くのはあまり想像したくない。
霧がかかって涼を取れたのが救いだ。
暫し樹林帯を詰め、乾徳山への分岐に到達すればすぐ傍だ。
石楠花の小路を駆け上がれば晴天の頂へ飛び出した。
暫く展望の開けた北面で休憩することにした。
少しずつ雲が去って、国師が正面に裾野を広げた様を見ることができた。
横一線の林道が走る。写真中央から稜線へ直上するのが天狗尾根だ。
となると、京ノ沢から上がる尾根も結構な急峻さに見える。
甲武信ヶ岳の方面はなかなか晴れず、この後も雲に飲み込まれていった。
大休憩の後は牛首ノタルへ落としていく。
途中には無造作に林鉄の遺産が朽ち果てていた。
タルで茶を飲み干して進む。
道迷いを恐れて往路を辿ることはせず青笹へと下ることにしたが
結果的には前者の方がスッキリするし色々と楽だったと思う。
駐車場から青笹へ向けて。
上部は綺麗な森だが下部は植林帯で、殆ど歩かれないのも頷ける。
無骨な仕事道という感じが拭えず、取り立てて通るメリットがないというのが
一般的な意見だろう。
雑食な僕は割とこういう道も楽しめるので色々お得だ。
この山で仕事をしていた・している人達がどう考えて道を作ったのか
色々考察してみるのも悪くない試み。
谷を跨いで左手の脆そうな巨岩を見上げ、植林地帯に飽きてくる頃
人工物が目立ち始めて民家の裏手に出た。
青笹から10分も歩けば神社駐車場。
この辺でお決まりの白龍閣で一浴し、甲府で昼飯をたらふく食べてから下道を走り
19時には自宅に着いた。
結果的には宿題が残ったが、なかなか歩き応えのある古道歩きになった。
奥秩父にはこういう道が幾つも眠っている。
今年は「古」の年にしようと思う。昔日の足跡を感じる山行をしていきたい。
おわり。
