行楽日和の三連休、紅葉の山に行っても渋滞に巻き込まれるだけ。
皆とダブらないような旅はないものか…。
…あ、ちょうど良い。今回は南伊豆ロングトレイルです。
伊豆半島南西の町、松崎から海岸沿いを歩き石廊崎まで48km。
温暖な気候で冬や春先に歩いている人が多い印象だが
この時期に歩く物好きはそう多くないだろう。
ドラマ版「世界の中心で愛を叫ぶ」のロケ地 松崎に着いたのは9:35。
10月も半ばというのに真夏日の陽射し、さぁ楽しもう!
「南伊豆にそんな高い山ないじゃん」と侮るなかれ。
このルートは道中の港を経由していく、つまり何度も海抜0mに叩き落されるので
地図で眺める以上に苦しい。
そして観光名所もあちこちにあるので、是非寄っていこう。
室岩洞は「伊豆石」と呼ばれる石材を採っていた場所の1つ。
江戸~大正時代、石切は南伊豆の重要な産業だった。
加工しやすい南伊豆の石材は、明治期の擬洋風建築に多用されていった。
遠く離れた東京で今も残る建物の礎に、当地の石が用いられている。
石の陰や土を穿った穴に、赤い鋏を掲げた先住民が棲む。
かわいい。
再び炎天下の車道歩きに戻り、木陰を拾いながら進む。
ダイビングが盛んな、青く澄んだ伊豆の海。
海蝕洞、ノッチ、柱状節理…さながら地形のサラダボウル。
海は近けどどこか違う、その「味」こそ旅の醍醐味。
暫し歩けば穏やかな浜辺が望める。最初の港、岩地だ。
南フランスのリヴィエラ、コートダジュールと称される白の浜だが、
三浦(さんぽ)と呼ばれる岩地~雲見は
1960年代までバスも通わぬ正に秘境だった。
当時は集落間を繋ぐ山道「三浦歩道」を通って行き来していた。
ここからはこのトレイルを辿っていく。
多少荒れ気味だが概ね緩やかに登る。木陰が嬉しい。
古くの石切場はさながら中東の遺跡のようだ。
時折、岬に寄って太古の息吹も感じよう。
木立の切り抜きは青春ドラマのワンシーン。
実際ドラマ「とんび」の舞台であると、訪れて初めて知った。
ここの足湯を期待していたが、シーズン後はやっていないらしい。
今回は補給を済ませて急ぎ足で過ぎてしまったが、名所が諸々ある。
いずれ腰を据えて観光してみたい町だ。
スキューバは…で、出来たら!カナヅチだけど!
茹だる路面を辛抱して歩けば、ルート中最高点の高通山が見える。
標高520mに満たない低山だが、海との水平距離は僅か1km。
つまり海岸線から1m毎に50cm上がっているのだ。
沿岸でこれ程の落差の山はあまり思いつかない程。
尤も、トレイルは急傾斜で苦しいわけではない。寧ろ涼しく緩やか。
とりわけ眺望は特筆に値し、朝から歩いて来た旅路を見渡せる。
雲見に訪れた際は是非登って欲しい。
キャンプ場からも近いし、ピクニックがてら。
向こう側、南岸は旅の行先。
奥に見える山稜の向こうが明日の目的地だ。
昼日中も手前、まだ進めそうだがこの先暫くテン場の適地がない。
南に降る道は行政が言う程荒れていないと噂に聞くが、降りた先は猿の住処。
あらかじめキャンプ場を予約していた。
伊豆では格安の1500円だ。
素朴なキャンプ施設で売店や風呂はないが、
温水シャワー(300円)が出るので簡単な風呂用具があると良いだろう。
近場の雲見で温泉とスーパーがあるのでライダーに人気らしい。
翌日の前半ロード区間をどれだけ早く済ませるかが肝心。
早立を心掛け、パスタを食べて17時には就寝した。
次回へ続く。