前回の続き。
3:00起床。夜露で湿ったテントを片して炊事場で朝餉を取る。
前日が15km、今日の目的地は更に26km先。長さを楽しもう。
4:35出立。電灯のない山道を、小型電球の灯を頼りに。
時折鳥獣の鳴声に驚かされ、歩む先は波勝崎(はかちざき)。
東日本最大級の野猿コロニーを擁するモンキーベイ。
まだ薄暗い暁の浜の向こうで幾重の甲高い声が響く。
だが驚くことに、浜を過ぎればむしろ鹿の気配が濃くなる。
久しく通られていなさそうな車道を下っていくと、
草葉を食んでいた数頭の群れが山林へ駆け上がっていった。
『霜降りることを知らず』と云われる温暖な伊浜は生花栽培で知られ、
とりわけ1960年代、伊浜を始めとした南伊豆マーガレット栽培地は
国内生産の9割を担っていた。
静穏に包まれる海岸線は、磯釣りで知られた荒々しい岸壁が連なる。
朝日に照る波勝崎と凪の海のコントラストに後ろ髪を引かれながら、
暫くの車道歩きへと戻ろう。
地図に残る落居へのトレイルは半世紀前に起きた大震災(伊豆半島沖地震)で崩壊し、
現状とても通行できるものではない。
車道を登り一町田でR136と合流するとランナーに抜かされた。
210kmを48時間で走るウルトラマラソン伊豆半島一周フットジャーニーの参加者だ。
前日から100km走ってきたらしい。ちょっとよくわかんない。
遮るもののない国道を峠まで下ると、ようやく今日初のトレイルを踏める。
この子浦遊歩道の眺望は抜群で、120mに満たない山と思えない。
古くは船舶運航のため風波を読んだ日和山で、麓の子浦の文化風土に根差した名所だ。
樹林の山も悪くないが、目的地が見えるとモチベーションにも繋がる。
前半の区切りとなる漁港、妻良(めら)が見える。
まさに微笑みたくなる旅日和だ。
樫の森を縫い降りた先は子浦、荒浪舞う大海の風待ち港として栄えた村。
鳶の啼く長閑な漁村、どことなくスローな時に包まれる。
子浦から30分も歩けば妻良だ。
食堂があり日曜もやってる…と聞いていたが眼前で「定休」とかけられた。
そ、そりゃないぜぇ…。
(※南伊豆地方の店舗営業時間はgoogle mapの記載と相違あるケースが多いです。要注意。)
まぁ、食料は持ち合せがあるので困らない。
逆ルートで歩いて来た方と情報共有し、後半のトレイルゾーンへ踏み込もう。
次回へ続く。