前回の続き。
妻良から林道を歩く。
舗装路で柱状節理との触れ合いができるとは、なかなかな珍名所だ。
ほのかな黄葉を愛で歩めば、やがて沢沿いに標高を落としていく。
谷川浜(やがわはま)を眼下に落とし、急峻な海岸線を縫い渡る。
次に来たなら渡り船でゆらゆらり、この辺りを遊覧してみたいな。
とてもダイナミックな柱状節理を拝めるらしい。
やがてトレイルは海を離れ二十六夜山の山腹を巻いていく。
この道は古来使われておらず、吉田~妻良は
赤羽峠(R136に繋がる現車道)か妻良坂(その途中で分岐して静海荘の辺りに出る破線)の
いずれかで往来されていたようだ。
それでも僅かな遺構が伺えることから、山仕事の道を近年になって整備したのだろう。
ジャングルのように繁茂するシダは蹄跡のトラバースで躱し、
概ね歩きやすい谷筋を落とせば集落は近い。
11:55 吉田は谷に貼りついた小さな村で、暖かな気候を活かしたアロエ畑が広がる。
冬にはモノトーンな空と海に映える赤が見頃だろうか。
コンパクトながらクライミング・釣り・トレイルとアクティビティの密集地。
正午の鐘も鳴ったことだし昼食を取る。
これから跨ぐ三ツ石岬、日も高まり暑さの険しさは増す。
余裕の無さは心の毒、ゆっくり休んで楽しみ歩こう。
草枯らす炎天の焦熱、肌焼く熱気を払う海風を頼りに。
30分程歩けば、遮るもののない富戸ノ浜だ。
西に大きく開けた湾は漂着ゴミの集積地で、
正直決して綺麗ではないこの浜が、私たちの行末と重なって見える。
『名も知らぬ遠き島より 流れ寄る』塵芥、その先を
一人ひとりがちょっと深く考えられれば少しはマシになるのではないか。
さて、実際ゴミを抜きにしてもこのドライサウナのゴロタ浜で
『渚を枕』にするには、私にはまだまだ鍛錬が必要らしい。
いずれ日除けのタープとパックロッドを指し、小春日和に再訪したい。
今日何度目かの峠を越せば千畳敷だ。
千畳敷という名前の景勝は日本に何十も存在するらしい。
さあ、今日の終点、入間が対岸に望める。
林道に登り返して妻良から担いできたコーラを開けた。生き返る気持ちだ。
普段見ない花に出遭えば心も和む。
入間までのトレイルも軽やかに降る。
昼中、幕を張り靴を乾しながら小眠りしていれば
やがて陽は傾き落ち、柔かな風が肌を撫でる。
昼と夜の境目に耽り、19時頃就寝した。
10月も半ば、山ならダウンを着るくらい冷え込むが
海抜0mでは裸で寝られるほど暑い夜が続いた。
次回へ続く。