アウトドアと飯のあれ

神奈川→富山在住のアウトドアと飯と旅行のあーだこーだ

2023年12月30日~2024年1月3日 熊野古道 小辺路 (1/4)

近況報告ですが元気です。

年明け能登地方で発生した大震災は富山県にも少なからぬ被害を与えましたが、

私が住む県南部に関しては軽微なものでした。

 

そもそも年末年始は富山ではなく和歌山で過ごしていました。

今回は熊野古道 小辺路です。

 

極楽橋駅の「いのちのはじまり」をテーマにした天井絵巻。俗世と聖域を別つ。

仕事納め後すぐ大阪駅へ。ポパイで5:00まで仮眠。

 

何気に大阪で降りるのは初めて。前回は新大阪だったかな。

 

バスに揺られて20分程、密教の聖地 高野山の市街地へ。

乗り継いで早朝から3時間半、高野山へ。

標高800mの山上にあり、温暖な和歌山のイメージを覆す寒冷地。

 

高野山金剛峯寺

池も土も凍る震える寒さは富山以上。

そして、小辺路とはここから熊野本宮へと繋がる総距離70kmの古道。

金剛峯寺を参詣し、いよいよ2泊3日の旅路がスタート。

 

8:38 出発。

2024年は『紀伊山地の霊場と参詣道』の世界遺産登録から20年の節目。

今回の小辺路もこの中に含まれるが、実はつい最近まで

「埋もれた熊野古道」と呼ばれる程、知る人ぞ知る道だった。

 

前半は基本的に緩やかな砂利~ロードという感じ。ランシューが好適。

熊野への道は、紀伊路伊勢路・高野路・大峯路・北山路・十津川路などが

挙げられますが、小辺路と呼ばれる高野路は、

なぜか日の目を見ないで埋もれているといっても過言でないと思います。

                                                                                 (『熊野古道 小辺路調査報告書』)

 

薄峠からすたこらさ。

そもそもこの道が高野山と熊野を繋ぐ参詣路として用いられたのは近世以後で、

平安期頃から紀伊山地に住まう民の交通路であった。

 

最初の大下り、大滝集落へ到着。

小辺路・中辺路・大辺路の名前も近世に付けられたとされ

これは距離を表し、つまり「大阪~和歌山の最短経路」の意。

古くから彼らの生活基盤に欠かせない交易ルートとして機能していた。

 

手を合わせ。

その内容は文人墨客・貴族が好んだ『蟻の熊野詣』の煌びやかなイメージとは対照的で

日常的な使い易さを考えられたストイックを感じる。

 

暫く無心で歩くとR371と合流。県境を行き来する。

要は、映えない。

加えて多くの箇所が昭和以降の道路開発で寸断・破壊されており

これがつい最近まで日の目を浴びなかった理由なのだろう。

 

水ヶ峰への道は薄い雪で覆われている。

しかし前述のバックボーンを知った上で地図を見て歩くと新たな発見もある。

R371(龍神スカイライン)と絡まない道の多くが、昔も今も変わらず存続している。

 

10:54 水ヶ峰。昭和中頃まであった集落の跡。

それは昭和中頃までこれらの道が現役で生活に使われていたことの証左。

山越え谷渡り、或る遠き日の足音に耳を澄ます。

 

また車道歩き。ちょっと一服。鶴姫公園の風力発電施設が見える。

水ヶ峰を過ぎ長々しい車道歩きに退屈し始める頃、

ようやく土が踏めるようになる。

 

暫く歩いてようやく土に戻る。出発して3時間半、大股集落への大下り。

石仏に手を合わせ初日2度目の下り、大股集落へと降り立ったのは出発から4時間後。

 

大股の自販機で休憩、お昼時なので塩お握りも頬張る。美味。

昼時を過ぎ大きく休みを取る。

初日にしてこのルートの最高点 伯母子岳への登りが待っている。

 

今日のラスト、伯母子峠への登り返し600m。

伯母子岳へはいくつか登山口があるが、専らここから登られるようで、

年の瀬ながら何組かとすれ違った。

 

萱小屋(Co965m)。薪ストーブの頑丈な小屋、今日はここより先へ。

重要な宿泊地となっている萱小屋は多少手狭だが暖かそう。

無人ながら手入れが行届いている点も有り難い。

だがまだ日が高いので可能な限り進む。

 

山頂に近付くにつれて雪が出てきた。

足を濡らす程でもない雪が冬枯れのトレイルを埋める。

昔は牛馬が塩や干し魚、薪炭を曳いてこの峠道を踏み締めたのだ。

 

標高は遅々として上がらないが、そうでもないと生活道として使えないのだろう。

往時を偲ぶと水平道にも滋味を感じてくる。

峠までのトラバースと山頂までの登りは、翌日山頂には登らずと考えて

山頂経由で峠に降りることにした。

 

15:00 伯母子岳。

丁度昼中にこの旅で唯一と言っても良いかもしれない山頂に到着。

本年の山納めはこのピークになった。

 

昼前に見た鶴姫の風車があんなに遠くに。

中央左に鶴姫公園の風力発電施設が見える。

あの山の向こうの向こうから遥々歩いてきたのを実感した。

峠までの下りは日陰で凍り付き、唯一チェーンスパイクを使った。

 

今日の宿、伯母子山小屋。頑丈な造りだ。

今日の宿は伯母子峠に佇む小屋。

簡素だが手入れの行き届いた小屋で、屋根の窓から差す光で中も明るい。

荷物を下ろして翌日の下見に向かう。

 

水場はぶっちゃけ道中一番恐ろしい片崖の道を歩く。下見がてら歩いたが明日は迂回しよう。

伯母子峠のトラバースは例えるなら番線のない下ノ廊下で、

古来牛馬が通ったというのだから驚きだ。

岐阜『割石の高崖』を連想させ、翌朝は尾根を迂回することにした。

 

ラーメンを食べて暖まり19:00頃就寝。

22:00~翌4:00にかけて強烈な豪雨と暴風に何度か目が覚める。

無理して三浦峠に行くのも視野に入れたが、そちらで張れば地獄だったろう。

 

次回へ続く。