6月初旬に甲斐駒ヶ岳へ行ってきました。

3:01発。夜闇の急坂を無心で登り続ける。

日本アルプスで最も代表的な金字塔は、と問われたら、
私は躊躇なく甲斐駒ヶ岳を挙げよう。
(略)
もし日本中で十の名峰を選べと言われても、私はこの山を落とさないだろう。

マイカーアクセスが悪いことを言い訳に寄らずにいた。
聞けば甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根は早月尾根に比肩する、とのこと。

苦しい登りが延々と続き、梯子や桟橋で縫うように攀じ上がる。
五合目の半ば辺りが特に苦しい。

小屋は通年営業しており、冬も人が絶えないようだ。
ベンチで良く冷えたコーラを飲んで生き返る。

麓から天に向け立上がるこの峻岳は、山岳信仰の場としても栄えた。
その名残の剣や夥しい石碑を側らに、山は当時と変わらぬままで在り続ける。

剣には迷いや煩悩を絶ち、大願成就を祈念する意味があるそうだ。
敬虔な信徒により奉納された山は全国数多点在するが、
ここまでの数が今も残るのは、関東圏では当山くらいだろう。

国師ヶ岳天狗岩のような、モニュメントとして残るものもある。

一通り岩場が終われば狭小の広場で、ここで一呼吸を置けば
長らく見ていなかったライチョウを久しぶりに見つける。

山頂に着くと風が雲を払う。
始めて来る山域は、やはり晴天でありたい。

嫋やかなカールを抱く仙丈ヶ岳。

それと対となるような、荒々しい鋸岳。
七倉岳から眺める針ノ木岳のような威風堂々とした山容。

さて、ここから日向八丁尾根での周回を予定していたが
鈍った体にはしんどそうだ。雲も湧き続け景色も望めないだろう。
実際、稜線はここから一気に曇りがちになったらしい。

往路を返すが、なかなか苦しい。標高を落としているはずだが
一向に着く気配がないのは早月尾根に近い感覚。

風そよぐ森、春蝉のコーラス。
緑のオーケストラに讃美して小走りで降りていく。

最後の500mは本当に苦しかった…。
振り返ってみれば登りより遅い。岩がちな下りは殊更苦手だ。

初夏と思えぬ大暑の渓谷、この尾根は当分御勘弁願いたいが
初めて訪れた絶佳の南アルプス、永らく記憶に残るだろう。
今度はどこに行ってみようかな。
おわり。