前回の続き。
3:00起床。ちょっと寒いので火を熾して温まる。
昼から天気が崩れる予報だが残り700m、5時間もあれば抜けられるだろう。
5:15出発。流石に朝の渓水は冷たい。
先も変わらず魚影は無い。
両岸の森が低くなり、水勢も落ち源頭が近いことを感じさせる。
ふと空木岳の方へ眼をやると丁度東面の岩肌がモルゲン・ロートに輝いている、
伊奈川はシーンとして音もなく静まり返っている。
段々と朝の陽射しが右側の尾根に当って来て
濁沢大峰や檜尾岳辺りの主稜の影がクッキリと伊奈川に延びて来た。
山の夜明けの爽快な事は何処で味わっても同じである。
(吉沢一郎「伊奈川と中御所谷」)
島田娘に陽が灯り…。稜線を歩く人が見える。
左手にしていた三ノ沢岳と離れだす頃、この谷で唯一の滝が出てくる。
見るとかなり高い滝が懸っている、
階段状に赭(あか)味を帯びた岩壁の上を約二十五・六メートル落ちているのである。
(略)
今の所何とも名称がついていないようであるから「赭岩の滝」とでも
しておいたらいいと思う。
(吉沢一郎「伊奈川と中御所谷」)
右からも登れそうだがかなり立っているので左壁から登る。
難しくはないがなかなかの高度感。
滝を越せばいよいよ大詰め、西千畳敷と呼ばれるカールだ。
赤木沢を思わせる広々とした源頭。
三ノ沢岳方面は深そうなハイマツが見えるので予定通り右に進路を取る。
紅葉の時期にはこちらに来るのもアリかもしれない。
小さなカールを抱く三ノ沢岳が手に届く頃、藪漕ぎもなく稜線に到る。
脱渓、サギダルの頭の手前に出た。
ここから宝剣岳まではすぐだが、連休の混雑。
まぁ疲労も溜まってるしゆっくりしよう。
結果的には天気も崩れることなく、
むしろ暑さに辟易しながら喧騒の稜線を楽しんで歩く。
巻道から見た三ノ沢岳が凛凛しい。どっしりした山容だ。
テントで賑わう山荘でひと休憩した後、
行列続く木曽駒ヶ岳。
来よう来ようと思って3年程手付かずだったが、
少しのアクセントを加えて来ると嬉しさも一入。
間も無くガスが強まり展望も望めなくなりそうだったので、
上松の方向へ降っていく。
長い下りだが歩きやすく、コンスタントに休めるので苦はなかった。
金懸小屋の水場は枯れてたが。
あと木曽前岳の巻道はもう通らん。
昼中、茹だる下りを済ませてタクシーを呼ぶ。
帰りは最悪倉本から歩かなければならないかと思ったが、
路盤状況は悪くなかったのでタクシーで上がってもらった。
アルペン荘からイザルボテまで40分、6600円。
その後は阿寺渓谷の日帰り温泉に寄ったがやっておらず、
賤母で食事、付知峡で温泉に浸かって翌朝帰宅した。