前回の続き。
沢靴をデポして乗鞍岳の最高峰、剣ヶ峰へ向かう。
ここから標高差300mは怠けた体にはしんどく、何度か腰を下ろす。
道中、数人の中洞権現ノ尾根からの登山者と会話する。
真っ白な山頂でも構わないと考えていたが、大日岳南東面で少し晴れだす。
足を取るハイマツと大岩に苦慮して進めば目指す頂。
道に散らばるスコリアや軽石が、ここが火山地帯と告げている。
直下の軽い岩場を越えて剣ヶ峰に登頂。…と思ったら、
山頂標を撮るために夥しい行列が続いていた。100人くらいか。
ケツに付いて並ぶ気にもならず、さっさと写真を撮って引き返す。
喧騒甚だしく響き渡る北面と対照的に、南面には片手で足りる程の往来。
古来から麓の集落ごとに乗鞍への登拝道が拓かれていたのだが、
今ではその多くが滅失してしまった。
岳谷から詰め上げる道も、高天原への侵入禁止措置によるか、それ以前かは定かでないが
既に廃道になって久しい。
いずれこの谷にかかる立派な滝を見に行こうか。
さて、デポ地まで戻ると辿ってきた名渓を望める。
暫し休憩し、中洞権現ノ尾根を下山する。
この尾根道は若干不明瞭だが、注意すれば迷うことはないだろう。
熊を良くみるらしいので時折笛を吹きながら。
森林限界下の深い笹薮は思わず閉口した。
足元が苔生した岩でズルズルと滑ったりする中掻き分けて進む。
標高以上に消耗する。いずれこの不明瞭な整備すらされずに消えていくのだろうか。
退屈な林道を暫し歩いて駐車場に着いたのは稜線から約3時間後。
緑深い森に広がる渓を伝って、山巓の深い懐に入ることで充実感溢れる1日を過せた。
帰りは暗くなった頃に島々でカレーとクラフトコーラ。
生憎時間が押していたので長居しなかったが、非常に美味だったので
この辺りに来た時はまた再訪したいと思えた。
近くの竜島温泉で癒した後、翌日は新穂高に軽く寄って昼前には帰宅した。
おわり。