アウトドアと飯のあれ

神奈川→富山在住のアウトドアと飯と旅行のあーだこーだ

2021年9月20日 三ツ頭(十二山尾根~アトノ尾根)

ウス。

シルバーウィークは穂高でテン泊予定でしたが、駐車場に着くと

あまりの人の多さに意気消沈して長野をぶらぶらしてました。

しかし山に行かないのも忍びない、でも人がいるところも避けたい。

そんなジレンマから、南八ヶ岳へ行ってきました。

 

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今年5月の南八ヶ岳縦走、ツルネから赤岳を望む。

唐突な話ですが、『八ヶ岳』と言えばどの山を連想するでしょうか。

北横、蓼科、硫黄、天狗、編笠…色んな名峰が連なりますが、

多くの登山者は最高峰赤岳を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

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同日、早朝の権現岳

しかし赤岳が開山されたのは今から230年程前の江戸時代。(1788年)

意外と日が浅いのですよ。

それより900年以上前(868年)に登られていた山があります。それが権現岳

権現岳山岳信仰は赤岳よりも遥かに古い歴史を持ちます。

 

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権現の門番 ギボシ。昔は『擬宝珠岳』とも呼ばれたらしい。

比較的山麓からアプローチがし易いからという理由もあったのでしょうが

一説では、巨岩信仰に深い関わりがあるのではないかと言われています。

ざっくばらんに言うと「大きな岩には仏様が住む」という考え方です。

 

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岩壁で言えば横岳の『大同心』も凄まじい。

今でも神社では大岩を御神体と崇める所が多いですね。

権現岳ギボシ等の岩峰が連なる所から、

そこから多くの仏様が住まう巨岩信仰の聖地となっていったのではないか。

 

大岩、岩壁を神仏と見なす同様の話は輪島岩倉山の『千体地蔵』や、

戸隠修験古道『大澤通り』の『十万八千佛曼荼羅御岩』等数多くの例があります。

(後者は位置が諸説ありますが。)

 

 

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昭和の地図より。

そして昭和には修験の名残、前衛の三ツ頭へ至る複数の登山道が開かれていました。

その多くが今では滅失し表記されなくなりましたが、

今回辿ったのはその1つ、前三ツ頭まで突き上げる十二山尾根です。

 

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夜明けの八ヶ岳横断歩道より笹藪に走る朝日。

別名『笹嵓(ささぐら)尾根』とも呼ばれ、名の通り笹と岩の稜線。

道中の八ヶ岳横断歩道は細かいアップダウンがあり、歩く人も疎なようですが

良いトレッキングルートですね。刈払いも丁寧です。

 

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観音平から40分、三味線滝に到着。

三味線滝の橋を渡って先の看板からでも良いですが、

面倒なので橋渡ってすぐに尾根に取り付き。

下部の笹は膝下程度、100m上がればすぐに歩きやすくなります。

 

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開けて非常に歩きやすいが、踏み跡は信用しない方が吉。

獣か人か紛らわしい踏み跡が縦横に入っていますが、信用せずに登りましょう。

基本的に尾根は広いけど素直なので、登りなら迷いようがないです。

 

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1750m、稜線が藪っぽいので左斜面をトラバース気味に登る。

砂礫になったり樹林帯に入ったり。道中のバリエーションが豊かです。

視界も開けているので非常に歩きやすく、全体的に明るく良い道。

 

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1820m、砂礫地に到着。

取り付きから300m程で広めの砂礫地に到着。

ここは南アルプスの山々の眺めが抜群に良い。

開けた砂礫の尾根は獣にも評判のビュースポットなのか、シカの足跡が沢山。

 

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1950m 再び樹林帯。木漏れ日が嬉しい。

大日向尾根からの稜線と合流したら、溶岩地帯のような大岩を登ったり

また笹薮の中に入ったりと忙し。

石祠や石碑等、往時を偲ばせるようなものは皆無ですが(探せばあるかも?)

登山道だった頃の錆びた看板はあるらしいです。

 

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2000m辺り、対岸のアトノ尾根と編笠山の頭が見える。

尾根で砂礫をトラバースする道は滑るとノンストップなので

多少面倒でも稜線の大岩と相手しましょう。

視界良好、対岸のアトノ尾根の様子も良く見えます。

 

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2100m 下草が照り輝く樹林帯。

十二山尾根という名前は、その名の通り12の山を乗越すから

ではないでしょう。そんな激しい道ではありません。

12座の有名な山が見える…12座どころじゃなく天気が良ければ富士山まで見えます。

なら富士見尾根って名前のが良いじゃない。

 

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谷筋は大きな削り跡。

どうやら『十二山の神』というのが関係してそうです。

修験の場として栄えた新潟を始めとする甲信越地方に広まった信仰で、

富山には全く無いので詳しくないのよね。すまぬ。

秩父に行った時に十二山神社があったから覚えてるけど。

 

ここも懐かしい。

 

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上部砂礫地 通称『馬の背』。

そんなこんなで樹林帯を越えると、上部の砂礫地帯に出ます。

この砂礫の尾根がとても見ごたえがある。どうやってこんなに色が分かれるのか。

地層の成立年代等によるものでしょうが…学がないから分からねぇ。

八ヶ岳だとここら辺にしか見えないような景色だそうです。

 

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対岸は御題目(材木)尾根。あちらの方が有名。

馬の背からは御題目尾根が見えます。

あちらの方が有名、というか今の天女山口登山道が開かれるまで

明治期はあれがメインルートだったようで、地図にも記載されています。

 

八ヶ岳には剣が掲げられている場所が3つあります。

勿論1つは権現岳、もう1つは阿弥陀岳の摩利支天という場所、

そして最後の1つが、御題目尾根なんだとか。

いずれあちらも歩いてみたいところです。

 

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馬の背上部から歩いてきた道を見る。

ここまで来れば目的地までもう少し。

砂礫のカーペットを後にして、最後の詰めに入ります。

 

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三ツ頭へ至る。

前三ツ頭からは一般登山道と合流。

なんだかんだこの最後の登りが一番しんどかったかもしれん…。

 

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8:40頃 三ツ頭到着。

全般的にとても歩きやすい道でしたし、道中随所にオオッとなる場所がある。

一時期登山道が開かれていたのも納得、いぶし銀な尾根でした。

 

山頂は他の山程ではないものの、少し混み合ってました。

 

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編笠と西岳。

道中は見えなかった編笠と西岳は雲も晴れ良展望。

春先に縦走で通った時は、なかなか堪えた登り。うーん、また行きたい。

 

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権現は雲の中。

権現岳は惜しいことに雲の中に入ってしまいましたが、

まぁ次の機会にあちらまで通す楽しみを取っておきましょう。

祠とかも興味あるしね。来年は小屋やるのかなぁ?

 

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帰り道のアトノ尾根。

ラーメンも食べて体力回復したところで、雲が沸き立ち一面真っ白に。

早めに下山して温泉に浸かって帰ることにしました。

 

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木戸口公園の辺り。

アトノ尾根は上から見るとアップダウンが激しそうに見えましたが、

滑りやすいところもなく下りやすい良い道。

ただ若干長すぎるのがネックなのかな。権現小屋がやってたらもっと賑わうかも。

 

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アトノ尾根ベンチ広場から十二山尾根。

アトノ尾根には開けたベンチ広場がありますが、

そこから今回歩いた十二山尾根が見えます。

右下の方には南アルプスの展望がよかった1820mの砂礫も見えますね。

 

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富士山。

下の方まで来れば再びガスは取れて、富士山が見えました。

来年になったら行けないかなぁ。1週間泊まり込みで行きたいルートいっぱい。

 

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アトノ尾根下部笹薮。

今回歩いた十二山尾根は、ルートファインディングも難しくなくおススメ。

一風変わった八ヶ岳の古道廃道、シリーズ化でもしたいくらい気に入りました。

また今度追記で何か書くかもしれませんが、その時はよろしく。

 

この後は入笠の麓で風呂入って蕎麦食って帰ったよ。良き良き。

おわり。