前回の続き。
必要なものだけ持ってテン場を後にする。
いよいよ黒部奥山、水晶岳へ向かう。
花崗閃緑岩で構成された山肌は黒々と染まっている。
古来黒岳と呼ばれたのも納得。一目で判る反面、距離の遠さに項垂れそうだ。
テン場から暫く下降すると黒部源流に降り立つ。
薬師沢左俣、赤木沢とウマ沢は歩いたが源流の末端は初めてだ。
今年のサマーシーズンは薬師沢からここまで上がってくるのも面白いかも。
五郎沢の辺りにはボルダーもあるそう。竿も持てば暇はしないだろう。
下流は暴龍の如く耳を劈く黒部の水も、ここでは静謐な流れを落している。
ぽつぽつとここまで散歩したり、水晶やワリモ岳から帰って来る人が見受けられた。
トラバース気味に沢沿いに上がっていく。
振り返れば三俣蓮華岳の気品ある山容。
三俣蓮華岳はあくまで当山行の通過点と考えていた自分が恥ずかしい。
あの山には明日絶対に登ろう。
小一時間で岩苔乗越に到着した。ここからは薬師岳が素晴らしい。
裏銀座から見たのでは微妙に角度が違い、これもまた趣深い。
そして1ヶ月前に歩いた道が見えてくる。
南真砂岳は良いピークだ。来期も湯俣に行きたいな…。
さて、水晶岳の前衛、赤岳には小屋がある。
一足先に小屋閉めを終え、次の春先までひと眠りだ。
小屋裏から水晶の頂へ。確かに赤岳周辺には石英がちらほらと転がっている。
標柱が見えるピークへ簡単な岩場を越えて25分ほどで到着。
昼中に差し掛かる頃、富山市の最高地点に到達した。
黒部の深山幽谷に立ち並ぶ山巓、槍の穂先も雲を払い、充実のひと時だった。
時間さえ許せば深山の深山と言うべき赤牛岳も考えたが、
とてもじゃないが足が着いてこない。
あれを日帰りでやるというのは相応の根気が必要だろう。
南西に見える北ノ俣岳は白い大海に浮く楽園のようだ。
風も無く転寝でもしたい程だったが、日が沈むのも早くなってきた頃だ。
そろそろお暇しよう。
と、水晶小屋近くのハイマツ帯で思いっきり両足を取られて転倒した。
膝を強打して猛烈に痛いが、歩けない程ではない。
何事も油断大敵。雲がかりも強くなってきそうなので鷲羽岳はまたいつの日の楽しみに取っておこう。
下りはあっという間に岩苔乗越に戻り、往路を返す。
上部で水を補給して最後の登り上げ。
テン場には17時前に到着。やはり雲がかりが強まり、少しばかり肌寒くなってきた。
暗くならない内にメシにしよう。
本日の夕食はおでんと牛串に〆はうどん。
うどんとおでんの掛け合わせ「おどん」が最近人気らしいので試したが、
出汁の問題だろうか、違和感が拭えなかった。
風変りの味も酒には丁度良い。たらふく食べた後は膝を労り、早めに就寝した。
次回へ続く。