前回の続き。
5:00前起床。まだ暗いが茶を沸かす。
片して歩き出すと昨日打った膝が痛む。鷲羽岳は諦めよう。
無理すると急登でぶっ壊れるパターン。またの楽しみに残して下山。
夜が白み、目覚め出した稜線をゆっくり眺める時間が取れたと思えば悪くない。
世の中には感嘆詞しか沸いてこない景色があり、
この一瞬の前ではどんな美辞麗句も後付けの陳腐極まりないものに感じる。
この足でアップダウンが多い巻道を辿る気はない。
三俣蓮華岳へ登った方がスムーズだ。ちょうどここには来たかったわけだし。
振り返り仰ぎ見ると、大天井の肩から鮮烈な朝がやってきた。
三俣蓮華の頂に立ち、暫し感慨に耽る。
あぁ、もう1日でいいからこの山に居られないかな。
来年もここに、黒部源流に来よう。
再訪を誓って下山路へ進んでいく。
澄み渡る空、暖かな稜線闊歩。
三俣山荘の小屋閉めもあり、こちら側に来る人は多くないようで
稜線上は快晴ながら人気も少ない静かなひと時を過ごせた。
この辺りはまさに「絵になる景色」。
風が吹き抜けそうだが、イグルーやスノーマウントで泊まってみたい。
今年のGWは黒部源流というのも面白いかもしれない。
双六と言えば、この景色。
人も少ない青空の滑走路など一生に何度見られるか。
全く、山に於いてはつくづく運が良い。
双六小屋の賑わいを後に、そそくさと下り降りていく。
鏡平小屋も小屋閉めで大層忙しない。
しかし幾らかオーバーペースだったので一服。景色もゆっくり眺めよう。
鏡映りの槍の穂先。
しかし鏡平から1時間ほど下った頃、とうとう膝が爆発した。
片足だけなので降りられない程ではないが、流石にペースが鈍る。
人を抜いたり抜かされたりに嫌気がさしたので、
ガレ沢の木陰で適宜休みながらゆっくり下ることにした。
結局この膝の痛みは1週間程続くこととなった。気付いたら治ってたけど。
ヘロヘロになってわさび平小屋へ着く。
ここでは世にも珍しい、泳ぐきゅうりやトマトが収穫できる。
安く美味そうなバナナを購入。
空気に触れると痛みやすい果物を水に浮かばせるのは成程理にかなっている。
見た目にも涼しく、何より冷えた果実。御馳走だ。
擦り減った体力を回復させ、平坦な砂利道を1時間ほど歩けば駐車場。
右手に見える錫杖と穴毛谷の岩壁を眺めながら、往路よりも軽やかな気分だ。
13:00丁度には新穂高に到着。
コーラを飲み山行の充実感に浸りながら
ひがくの湯で生姜焼き定食をたらふく食べ、夕方には帰宅した。
おわり。