ウス。
紅葉の季節がやってきました。
里に下りてくるには暫しかかりそうですが、
今回の目的地は穂高の奥地にある南岳。
大キレットを経由するか、天狗池から登るか、新穂高から南岳新道で至るか…。
いずれのルートも1日がかりです。
今回は殊更静かな横尾本谷右俣にて南岳に至ります。
涸沢と聞けば登山者ならば聞き馴染みある大人気スポット。
ピークにはテントだけでおよそ1000張もいたそうな。
この日も晴れ間を掴もうと650張の大賑わいだったそう。
その涸沢と山を挟んで隣接しているのが、
横尾本谷左俣から詰めていく大キレットカール、
そして右俣より至る本谷カール。
道中は涸沢から降りてくる人や、前夜泊の方と多くすれ違い、
流石穂高の超人気スポットという感じ。
屏風岩を間近で見るのは初めてだ。
本谷橋ではひと休憩する人で賑わいます。
ここで道を逸れ、沢装備(と言っても靴と靴下だけ)に変えて入渓。
渡渉で面倒臭いので沢靴は持って行った方が無難。
岩苔が酷いのでフェルトソールが良く効きます。
暫くはゴーロを歩いていく。
前方には北穂の岩壁?
このゴーロ帯が若干退屈なので、涸沢へ伸びる道を途中まで進んで
適当な所で谷を降りる人もいます。
なんだかんだ沢を歩いてる方が良さげかな。涼しいし。
大滝や難所は皆無なので、沢歩きのテイストが強い。
同じ北アルプスでも薬師沢左俣とは違う趣があって愉快だね。
40分程で二俣に到着。
ここで目指す稜線がお目見え。
左俣は雪渓が残っていれば登りやすいそうな。
どことなく長次郎谷を想起させます。
今回歩いている右俣は、ウォルター・ウェストンが槍ヶ岳を目指して歩いた道。
登りはじめるとすぐに、この未知のルート、横尾谷のおもしろさがわかった。
(略)
絶壁の下底部に達すると、みごとな滝が万雷のような轟きをあげて
滝壺の岩に吸いこまれていた。
(ウォルター・ウェストン『日本アルプスの登山と探検』)
彼は幾度か槍ヶ岳へ赴いていますが、
最初のルートはメジャールートの槍沢ではなく、
島々から徳本峠を越え、この本谷右俣を登り、稜線から更に槍を目指すというもの。
結局その時は着くのが遅すぎて、登頂は断念したんだけども。
このルートの詳細に関して調査している人もいます。興味深い。
これを登りきると、目の前に広々とした雪原がひらけて、
荒々しく切り立った山の斜面に雛段のように立ち上がってゆく。
(ウォルター・ウェストン『日本アルプスの登山と探検』)
まだ雪のある頃に歩き、またこの黄金平(こがねだいら)の辺りで雨に降られたので
ウェストンはこの景色を見られなかったことでしょう。
背後に屹立する屏風と、引き立たせる色取り取りの紅葉。
カールの中のナナカマドは韓紅に燃え、一際目を惹かせる。
始発で上高地入りしてからほぼノンストップでここまで来たので、
沢も終わりようやく一服。ここで靴を再び履き替えて進みます。
暫しカールの岩を渡り、横尾尾根のコルを目指して最後の詰めです。
中央のYになってるガレ場を登り、右寄りにトラバースしていきますが、
ここまで歩いてからなかなか堪える300mアップ。
それから右寄りの断裂した岩を伝って這いあがると、稜線に落ちこみがあった。
(ウォルター・ウェストン『日本アルプスの登山と探検』)
横尾尾根のコルの少し上側に出ます。
ここで大岩に跨って一休み。歩いてきたカールを暫し眺める。
この日は結局後続はいませんでした。
ここからは一般道。天狗池を下って槍沢と合流すればそのまま上高地へ。
しかし今回の幕営地は南岳。
ここから更に300mアップで縦走路に合流します。
体に鞭がビシバシ打たれるよ…。
あ、稜線出たら槍が見えると思ったら、ちと天気悪く見えませんでした。はは。
這う這うの体で縦走路に合流。
あとは7月に歩いた逆コースなので勝手も分かる。
南岳まではゆるいのでルンルンタイムです。
結局この日は朝からの快晴は潜まり、煙雲に包まれて。
そんな中でも稜線は穂高槍縦走に向かう人で賑わっていました。
小屋に着いたのが13:45頃。
ラーメンを茹でようか悩みましたが、香りに敗北して豚汁定食を注文。
本当に美味しいもの食べると笑えてくるね…。
どうしても我慢できなかった…☺️ pic.twitter.com/uPJ0smOHA5
— 成瀬晶 (@akiranngo_M) 2021年10月9日
遅めの昼食を取った後、いそいそとテントを立てたら溶けるように就寝。
結局それから一歩も動かず、12時間くらい爆睡してしまいました。
次回に続く。