フットワークの軽さだけ一流。
ウス。
藤沢の端っこでもぞもぞ、本日も僕は元気です。
最近はちょっと立て込み、僕も少してんてこまいになっているのですが、
出ましたよ、「急性ヤマノ・ボリ症候群」が。
これに罹ると、24時間以内に山に登らないと、ウサギのように心が寂しくなって生命の危機に陥ります。
慢性的に疾患している方も多くいらっしゃる、大変恐るべき病です。
ということで、急遽パッキングして奥秩父へと向かうことにしました。
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両神山。奥秩父山塊に裾野を広げる日本百名山の一峰。1,723m。
小鹿野町と秩父市の境に位置し、花と草木で彩られる埼玉でも有名な山の1つで、
岩稜の八丁尾根は年々滑落事故が多発する鎖場の名所。
四季を通じて人々を楽しませる、山岳信仰の山。
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7:00 日向大谷(ひなたおおや)。
古くから山岳信仰が盛んな両神山にはいくつかの登山口がありますが、
最も登られているのが、日向大谷からのいわゆる表参道。
登山口から少し下りたところに無料駐車場があるのです。
7:13 準備運動を済ませ、日向大谷登山口 出発。
向かいから柴犬が歩いてきました。
首輪をしているので、恐らく登山口にある里宮の飼い犬なのでしょう。
帰りに近づいたら威嚇されました。🐕<BOWOWOWOW!!!!
冬の峠は越えたとは言え、まだまだ肌寒い時期、
この日はとても良い天気で、関東も場所によれば17℃を超えるところもあるとか。
本格的に春めいて来たということの証左でしょうか。
付けてきたニット帽、手袋、ネックウォーマーは早くもお役御免です。
そろそろこいつらとも暫くお別れの時期が来ますかね。
道中には多くの石碑・仏像が点在しており、修験者は参拝しながらこの山を登ったんだとか。
僕もそれに倣うことにします。
…そういや山神様には何て唱えるんだろう。ナムアミダブツ?
30分程歩いてると会所という休憩所に着きます。
ここから破線、七滝沢コースへの分岐。
新緑の時期には、まさに秘境の山の真髄を味わえる道らしいですが、
常に濡れた鎖場や、今の時期は凍結が他よりも激しく、これまで遭難・滑落も頻発しているコース。
また今度にしましょう。
日もポカポカと暖かい渓谷歩き。
夏場に来たら涼しいし木陰もあり、花もあり、とても気持ち良いんだろうなあ。
シーズンは人がエグいらしいですが…少し来てみたくもあったり。
もっとも暖かくはありますが、落ち葉の下は氷が張り、油断するとズルッと行くので要注意。🍂⛄
スパイク履くほどじゃないってのがやらしい。
道中にはウロや洞穴が。こういうところでタヌキやクマは寝てるんですかね?
と思ったけど、こんな道の近くでは寝ないか。
8:25 八海山。
米から作られるおいしいジュース…ではなく、御嶽山にある地が由来。
元々この両神山には、山頂に至る道の御嶽神社や、麓の浦島地区にある金剛院等、
御嶽山に対する信仰由来のものが点在しています。
理由としては両神山のこのルートを開いた人の中に、御嶽山の行者がいたからという説。
両神山と言えば関東屈指の鎖場として名が知られていることもありますが、
急峻な八丁尾根を形作る、両神山の主な鉱物が、チャート。
海洋プランクトンや海綿生物が長い年月をかけて海底に堆積し、
これまた長い年月をかけたプレート活動の中で、この両神山を形成したのです。
ざっくばらんに言うと鉄より硬いので、かなり風化しにくいわけです。
なので周りの脆いところから崩れていった結果、今に至るという話。
チャートはプランクトン等の小さな化石(微化石)なので、現代科学で年代が特定できますが、
ペルム紀~ジュラ紀中期にかけてのものだと判明しているそうです。
ピンと来ない?ジュラ紀と言えば、男の子の憧れアパトサウルス!
アパトは少し後期かな?
私たち登山者にとっての憧れの始祖鳥は、更にもうちょっと後なのです。
ちなみに僕が持っている石がチャートかは全く分かりません。
9:00 清滝避難小屋。
2008年頃に営業を停止し、今でも避難小屋として活用されています。
炊事場もあるので、ちょっとした料理を楽しむのも良さそうですね。
冬期はもちろん水が出ません。
中はこんな感じ。次来た時は1泊しようかな。
清滝小屋の脇を通って更にここから更に登り詰めます。
太陽光で脳内快楽物質がドバドバなのであまり辛い印象はなかった。
小屋から少し登ると、会所で分岐した七沢滝コースと合流。
そして神社までの産体尾根へと取付きます。
気候の影響もあり、日の当たりが良いここまでの道はほぼ凍結は皆無でしたが、
ここから常緑樹が目立つ日当たりの悪い尾根道なので、場所によっては一面凍結。
僅かな距離ですが危険極まりないので、チェーンスパイクはこれからの時期も暫く必需品ですね。
取付きから20分程で両神神社。登山口の里宮の本社だそうで。
三峯神社を筆頭とし、秩父では山犬(=ニホンオオカミ)信仰が盛んで、オオカミを祀る神社は20を超すとか。🐺
何故この地方に山犬?という疑問は、日本書紀にて解くことが出来ます。
則日本武尊、進入信濃。是国也、山高谷幽、翠嶺萬重、人倚杖難升、巖嶮
磴紆、長峯數千、馬頓轡而不進。然日本武尊、披烟凌霧、遙俓大山。既逮
于峯而飢之、食於山中。山神、令苦王、以化白鹿、立於王前。王異之、以
一箇蒜彈白鹿、則中眼而殺之。爰王忽失道、不知所出。時白狗自來、有導
王之狀、隨狗而行之、得出美濃。 (日本書紀より抜粋。)
そこは深山幽谷、険しい山々が万と連なる地方。岩が幾千の峰々を作り、馬も足を止め進むのを止める程です。
日本武尊も霧を払い山々を歩きますが、峯に至ると疲れが出て、腹ごなしに食事を取りました。🍴
すると山神が彼を苦しめようと、白鹿の姿をとり、彼の前に姿を見せます。
これを訝しむと、日本武尊は蒜(ニンニク)を弾き飛ばし、それは鹿の目に命中し、山神を死に至らしめました。
山神が死んだからでしょうか。彼はたちまち道に迷い、どこにいるのかさえ分からなくなってしまいます。
その時、白き狼が彼の前にやって来て、道案内をするように歩き出しました。
それに従い着いていくと、美濃へと出ることができたのです。
この深山が現在の奥秩父山塊付近だったんですかね?その辺は諸説あるそうです。
ともかくこの内容が元になり、この地方では日本武尊を祀る神社が多いとのこと。
両神御嶽神社本社。前述の金剛院からここまで、古くは修験者の登山道が開かれていたそうです。
両見山からサンゴウツを経由し、辺見岳を超えて両神山へと至る道。
今では破線の記述もない、殆ど歩かれていないルート。
地図上では僕が今回歩いた道の3倍近い距離だそうです。ひぇ。
ここから少しなだらかな道へと変わります。
このトレイル本当に落ち着く。時間のある限り歩いてたい。
木々を抜ければ山頂はもうすぐ。視界も開け、高度感マシマシのマシです。
10:05 両神山最高頂 剣ヶ峰登頂。
快晴で無風に近く、春の陽気の稜線から覗く木曽駒ヶ岳。
一面山に囲まれ、まさに「翠嶺萬重」。
大滝村方面。
中央手前の大迫力の岩稜は赤岩岳かな。
秩父屈指の破線ルートに、いつか行ってみたいですねえ。
小鹿野町方面からは二子山、赤久縄山、榛名山が。榛名山は分かりやすかった!
1ヶ月前二子山から八丁尾根を眺めましたが、それが遠い過去のよう。
宇都宮方面では武甲山を始めとする秩父の山々、筑波山が裾野を広げています。
そして本日は僕が一番乗りだったのか、誰一人すれ違うことがなかったので、
気兼ねなく山頂の風景を満喫。
カップヌードル最高。やっぱスタンダードが一番なわけ。I LOVE NISSHIN.
YAMAPの記録を見たら、登りで1100kcalほど消費してたみたいです。
カップヌードルは350kcal。全然足りなーーーい!!
奥秩父山塊方面は金峰山、甲武信ケ岳、果ては富士山が覗けます。
左端っこの奥に見える曲線の山が雲取山なんだとか。
ということは、甲武信から見えた富士山の位置関係だと、あっちだから…
とか考えるの結構好きです。へへへ。
ゆっくりこの景色を堪能したところで、10:50 出発。
当初の計画では八丁尾根往復も視野に入れてましたが、体力面と時間を考えるともう充分かなと思ったので、
いつか八丁峠側から、思う存分楽しむことにしました。
行きに通ったトレイルを楽しんでいると、数人の方とすれ違う。
しかし下りが結構キツい!凍結で滑りかけて怖かったです。
1時間くらいゆっくり時間をかけて、七滝沢への分岐へ戻ってきました。
ここまで戻ればとりあえず一安心ですね。
小屋で白湯を飲んで落ち着いたり、少しペースを落として安全に下山することに。
両神山は、埼玉で唯一日本の滝百選に選ばれた丸神の滝の源流。
両神で磨かれた水が、沢山の生命を育んでいるんですね。
雁坂トンネルを挟んだ向こう側には西沢渓谷。
西沢はまた今年も行きたい。
14:00ピッタリに日向大谷登山口到着。今回の山行は終わりを迎えました。
久々に充実した1日を過ごせたと思う。たまに山行かないと鬱屈して仕方ないんじゃ。
ということで温泉行きましょう、ということでね。
前回の二子山でも行った武甲温泉です。
麓に両神温泉があるんだけどね、財布見たらお金なくてコンビニ探してたらこっちまで来ちゃった。
ここの温泉は本当ちょうど良い塩梅の温度なんですよ。
熱すぎず、温過ぎず。
温泉にゆったり入って登山の疲れを取り、失ったカロリーを取り戻すように補給しました。
神に感謝。南無阿弥陀仏、アーメン。
その後は休憩所でグッタリしたり、青梅で仮眠を取ってゆっくり帰路につき、
家の扉を開いたのは日付が回って1:00頃でしたね。
そして今でも筋肉痛が取れません。うおー。
気が塞いだら、たまに皆さんも登山に行きましょう。良いことありますよ。
またね。