前回の続き。
2:30頃起床。小屋前の休憩所で茶を沸かす。
さて、2年前は巻き道を辿って雲取山まで抜けたが
出来る限り寄れるピークには登っておきたい。
竜喰山の取付きは踏み跡が錯綜しているが、適当なところから直上していく。
1883mピークから尾根沿いに明瞭な道。
夜は明けヘッデンも要らない。
4:27 竜喰山。
ここから大常木山への道は個人的にとても好みだった。
とびこんであたたかさと親しさと愛とを感じとる山である。
うす暗い原生林の中でなく小鳥や、つつましく咲く花や、岩峰を吹きなでる
さわやかな風がある。
ああ素晴らしき奥秩父の山々。
鮮烈な朝に照らされた笹が喜ぶように小風にそよぐ。
夜を抱くようにまだ寝静まる森も、この旅情に濃淡の彩を与えてくれる。
白藍に浮かぶ富士が一際均整のとれたような姿を見せてくれるのは、
巻き道ではなくこの尾根の見所の1つだ。
あの小高き山は大菩薩嶺だろうか。
主脈上にあって異質な岩峰の大常木山は難はないが
滑り落ちればタダでは済まないだろう。
北面が開けた展望台。
チリチリと響く小鳥の囀りに余所見をしつつ歩めば、草食む鹿が驚いて駆け降りていく。
大ダルへの道も変わらず明瞭で、軽快に到着。
ここから飛竜山への登り返しがあるが、記憶ではシャクナゲが繁茂していたはず。
cobraで潜るのは少々億劫、ここからは巻道を辿る。
巻道も歩き辛く疲労が溜まるが、直下に来れば飛竜山までは明瞭極まり、
ここで今日初めて幾人かと擦れ違い。
再び巻道となる。
そういや前はこの辺ですっ転んだっけね。今日は明るいしそこまで急ぐこともない。
日が昇ってくると、雲取山から大勢押し寄せる。
富山ではあまり見慣れない花を愛で、狼平で小休憩。
腰落として時計を見れば8:00。結構時間を食っていたが、
9:30までに雲取山に着くならこの日のうちに下ってしまおうと決めていた。
三条ダルミからは最後にビシバシ鞭打つ急登。
気分が憂くので曲でも聴こうか。
Otoemon-ayahiro SUMI「Bow Shock」のリズミカルな打鍵に乗せて。
9:08 雲取山の頂に出で立つ。大賑わいの山頂からはスタートの金峰山が…
見えない!そう、ここからは見えんのだ。
総ての山脈が見えないことに一抹の寂しさもあるが、
それも歩いてきた道の長大さたるものと思えば嘆くばかりではない。
そして、そんな俗念もここから奥多摩方面に延びる山を見れば掻き消える。
あれを降りるのか…というか登るのか…。