前回の続き。
4:30起床。
5月頭の標高2400m、流石にAir280とULダウンでも冷え込んだ。
日の出を眺めながら小屋前デッキで焙じ茶を沸かす。
今日も良い一日となりそう。
5:30 出発。巻き道から破風山への分岐へ。
この区間以降残雪は消える。軽快な足取りで降りよう。
樹林が切れれば雪冠る富士を携えて、ご機嫌な稜線歩きが始まる。
わざわざ近くもない奥秩父まで、年に数度来ているのは何故だろう。
「日本の山」を感じながら歩けるのが嬉しいからか。
どうしても北アルプスのような高山帯を歩く場合、
山と麓が繋がっていない感覚に陥ってしまうのだが
奥秩父は人里・森・絶巓が渾然一体と結びついている。
実際地続きな以上、アルプスにも人里との繋がりはあるに決まっているが
どこかその非日常じみた景観には、見えない隔たりがある。
奥秩父はどこか「人臭い」ところが親しみ深い。
景観のみならず文化・伝承としても垣根の無い柔かな雰囲気が好きなのかもしれない。
そんな起結のない思案を独り言ちながら急登を登り返し、
振り返ると朝発った甲武信が丸頭を覗かせる。
ここから雁坂峠までは2年前歩いた、小気味良いアップダウン。
小屋泊りの方と幾度か挨拶。逆周回も面白そうだな。
あの三角屋根は黒金山、周りの山と見比べても黒々とした針葉樹林であることが判る。
カメラを忘れた乾徳山、また登りに行く際には黒金山まで延ばしてみようか。
峠で暫し荷降ろしして、進む道に心躍らせる。
ここから雁峠まで暫く樹林と共にするが、味のある清々しい区間だ。
富士の裾野の青が濃くなる頃、雁峠の手前に着く。
本当に絵に描いたような「日本」って景色だ…。
その頃には昼前、笠取山が見える。
昔住んでいた矢口渡と川崎を分つ多摩川の、最初の一滴があそこで生れるんだ。
お子様と一緒に東京の水源地へのピクニックなんて、どうでしょ。
「水のはじまり」を親子で訪れるのなんて、とっても良いと思うんだけどな。
いやしかし、笠取山の急登は凄まじい。
距離はさほどでもないが、低頭平身の懺悔坂。
厳暑には御勘弁願いたい。
笠取山で大きく休憩。
この山を境として、遭う人の多さも増えた気がする。
そういう意味でも分水嶺なのかな。
暫し雁峠と三境を眺め、春日向の頂で寝転ぶ。
さて、予定よりは早いが目的地へ急ごうか。
あまり目立たないと言えば失礼かもしれない、
今日ラストの唐松尾山へと歩みを進めよう。
しかしこの黒槐のコルまでの道も滋味深いのだ。こういうのが大好きなんだ。
自然体な道、とでも呼べばいいのだろうか…。
「歩く」という行為を幾万人も繋げて、私もその一員となる。
奥秩父には旅の原初的体験が眠っているのだ。
意外にもこの「目立たない」ピークを目指し、幾人もすれ違う。
大学サークルだろう、若い子達も。過去りし青春を羨ましく思う。
意外と長いダラダラ道を過ぎれば山の神土と着く。
ここから将監峠は綺麗な散歩道で、間もなく到着。
14:00前に到着したが、この日は満員御礼で最終的に45張くらいで
小屋前にテントが溢れる始末。
前回は悠々自適と使えたが、みっしりと埋まったテン場。
とりあえずストレッチとラーメンを食べて明日の行程に備え、明るいうちに就寝した。
次回へ続く。