気が狂いそうになる今夏の暑さ。
眼球焼き潰すような酷暑の中、愚直に山に登ろうものなら
土瀝青の上に這い出た紐状生物の如く哀れな末期を遂げること瞭然。
日夜身を捩る寝苦しさを耐え忍ぶのも限界。
恒例となっている黒部源流の避暑山行、今年は薬師沢右俣へ行きましょう。
先月も行ってたけど気にしなーい。
前夜入りして4:30 折立発。
無心で登り詰める。
泊りなので急ぐ必要はないのだが、今回はある目的もあるので。
早々に受付。
ちゃっちゃと建て不要な道具をテントにブチ込んで登り返す。
北ノ俣岳を源頭とする左俣と相対し、右俣は薬師岳に端を発する。
(正確には東南尾根2855m付近を源頭とする。)
快晴の空を拝み、清流を遡り百名山へ。
今回は釣り道具を一式持ってきた。
昨年からテンカラ釣りを始めたが、言い訳を連ねて碌にやっていなかった。
持ち腐れも勿体ない。道中竿を振ってみよう。
40分で左俣の入渓点に到着して靴を履き替える。
中俣の上流から降りても良いのだが、釣り人がいたら面倒なのでここから。
長らく山に入っていなかった分、緑に溢れる森を見るだけで穏やかな気になる。
中俣の出合で早速竿を振ったら、一投目で食いついた…が慌ててバラシてしまった。
先行の様子もなく、渇水気味だが水量はそれなりにある。
気を取り直してのんびり釣り上がろう。
それなりに開けておりキャスティングもやりやすいが、
あまり魚影は多くないのだろうか。
少し勘が掴めてきた頃、素人目に見ても良いポイントに到着。
白い影が岩陰を縫うように走る。
あの奥の小さな沢の流れに向けて打ち込んでみる。
一投目で毛鉤が沈み、跳ね上がる水音に思わず心が躍った。
落ち着いて引き寄せる。
7寸足らずだが初めての釣果、それも黒部の岩魚だ。
何とも嬉しい…。昔、三崎でタコを釣り上げた時以来。
これはハマる人がいるのも納得できる楽しさだ。
一頻り浸りリリース。遊んでくれてありがとう。
出来ればもっと釣り上がりたかったが、既に2時間が経過しようとしていた。
惜しいが竿を納めて先へ進もう。
沢自体も全く難所がなく、渓の流水・時折の涼風・静穏な森に響く小鳥の囀りを
めいいっぱい楽しみながら遡上できる点が素晴らしい。
気の向くままに深いプールに飛び込めば、下界の暑さとは何だったのか。
暑さとは無縁の、大人の夏休みを満喫しながら緩やかに登っていく。
次回へ続く。