ウス。
山にも人のように、顔があります。
『貴公子』『貴婦人』と呼ばれるように、山容の風貌は登山者を魅了する要因の1つ。
嫋やかな山も味がありますが、僕は巌巌として人を阻む山が特に好きです。
今回の舞台は新穂高の怪峰、錫杖岳です。
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錫杖岳。北アルプスに属する標高2,168mの岩峰。
一般登山道のないバリエーションルートが続く、北アルプス有数の難所で知られる。
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家から新穂高まで車で1時間半程の距離。
ですが今まで来たことがなく、今回が初穂高です。
着いてみて一言
「なんじゃこの人込み…。」
時はお盆、観光客だらけで、朝5時過ぎと言うのに無料駐車場が満員です。
早々に車を止めて、荷物を持って目的地へ。
今回の始点は笠ヶ岳クリヤ谷登山口。
数本ある中でも経験者向けとされるのがこのクリヤ谷ルートです。
初っ端の急登を超えながら進むこのルートでは、途中クリヤ谷を渡渉します。
水量が多く、ローカットなら丸々浸かってしまう程度。
一応AlpSpryはゴアテックス素材ですが、踝まで浸水しては何にもなりませんし
脱いで渡ることにしました。つめたーい。
その後も40分ほど進むと、錫杖岳前衛フェイスが見えてきました。
これが見える頃に直進と左で分岐します。
直進すれば笠ヶ岳、今回は左折。
クリヤ谷と錫杖沢出合へ。
この大岩だらけの沢をただひたすら上っていくのが、錫杖岳のルートです。
シーズンの北アルプスと言うのに、今回5人ほどしか道中で見かけず。
人気(ひとけ)のない山とは聞いてましたが、その理由は後々身に染みることに。
岩質は決して悪くなく、ひたすら岩を登る、僕の大好物のような道でした。
だけどね、暑い!
時折上から降りてくる風が心地よいですが、日当たり抜群の斜面なので
掴む岩が45度くらい、まさに岩風呂、終始地獄のような暑さでした。
そりゃ誰もこねーよ…。
登っている最中はアドレナリンが効いていたのでしょうが、
下山時にこれが猛威を振るいます。
時折水を飲みながら休憩して進む。
この山は以前から目標にしていたところの1つで、今回我慢しきれずに来ましたが、
北アルプスにあって有数の難所とも言われています。
一切の残置や鎖のない自然味溢れる岩峰でもありますが、
それ以上に危険なのが、『雨』です。
雨が降ると今の道が、天然のウォータースライダーへと変わるのです。
しかもビバークしても台風のデスコンボです。死亡フラグビンビンです。
なので①15:00から曇天になるので、それまでに下山見込みでなければ終了
②雷がどこかで鳴ったら即終了
という足切りラインを決めていました。
あまり見かけない花も多くて、夢中になりがちですが
集中力を切らずに登る、これが結構大変。
道中沢で休憩しつつ、取り付きから1時間少しでB沢の分岐に到着します。
A沢・B沢の分岐では、B沢の方が比較的楽ということで右折します。
ここを超えれば藪漕ぎ後にコルに出て、いくらもしない内に南峰山頂へ到着。
ゴジラのような岩稜を見ながら、更に強烈な岩場を登ること暫くして
さあもうすぐで山頂だな、時間も悪くないしこれは行けるなぁ、
勝ったなガハハ!とか思っていると
ゴロゴロゴロ…。⚡
あ゛っ…ハァ~…。
焼岳から雷鳴が聞こえました。
しかも風は向こう側から吹き上げています。
つまり、激ヤベーってことだ。
ということで泣く泣く下山しました。仕方ないけど。(;▽;`)ウオオオ
雷鳴は数回だけで、結局こちらに雲は流れてこなかったのですが、結果論です。
でも悲しいよー。(;▽;`)ウオオオオオオオォォ
モチベーションがプッツリ切れた状態の下山は、凄まじい疲労感に襲われました。
今回荷物が重すぎたのも良くなかったな。アタックザックくらいで良いと思う。
ですが1つの目標だった錫杖岳に触れたのは良い経験でした。
次はこんな猛暑日ではなく、秋の涼まった日にまた登りに来ようと思います。
それまでに体力と経験を少しでも積んでおこうかな。
下山後はコーラガブ飲みして温泉に入り、飛騨牛コロッケ定食を食べて
家に着いたのが16時過ぎでした。
いつも使わなかった筋肉を酷使したのか、えげつない筋肉痛になっています。
台風空ける前には治っててくれよなー。
怪峰、また逢う日まで。
ばいばいー。