やぁ。
鮮度も落ち切った過去山行、今回は昨年3月の西穂高岳です。
人混みを避けて新穂高から西尾根を詰めました。
新穂高を1:50出発。冬はビジセン前の駐車場が無料開放されているのが良い。
取り付きの穂高平小屋まで意外と歩かされる。
途中スキーヤー2人とスライドしたがtwitterの相互フォロワーで
この日は槍ヶ岳1dayだったそうだ。
取り付きでワカンを履く。
この週は高熱が続き、既に雪がグズり出し樹林帯で夜明けを迎える。
団子になるほどではないが、あまりペースは伸びない。
幕営適地のコルに着いたのは出発から5時間後。
白銀の抜戸岳を正面に据えていつものラーメンを食すと、体力も持ち直した。
ぼちぼちアイゼンに替えて稜線へ飛び出そう。
第一岩峰の雪付きは良く、左から軽く抜けられる。
上がるとハイマツが露出しており、雪不足を疑ったが杞憂で
寒風に叩かれた雪稜は刃が噛んで快適極まる。
右手に西穂のピークを掴むと、樹林帯で静まっていた熱が一気に高まってきた。
一度降りてJPに登り返す。
左に落ちる柳谷をスキーヤーが詰めてきているのが見える。
ピラミッドピーク付近から太陽が昇って来た。
雪が緩む前に核心部を抜けたいが、景色に歩みを止めざるを得ない。
JPに辿り着けば、北西尾根の向こうに並ぶ槍穂高の峰々。
飛騨沢も雪が乗り真っ白だ。さぞ滑走日和だろう。
この北西尾根も歩きたいルートだが、トラバースが長く、見た目より嫌らしそうだ。
そしてジャンダルム。
正直、奥穂から見ると「丸いなぁ」という幼児みたいな第一印象が浮かぶのだが
こちら側からはまさに毅然とした穂高のトップスターだ。
浅学なのでモナ・リザより大盛牛丼を選ぶような無粋な男だが、
この稜線闊歩のひと時には芸術的真理がある気がした。
夏に歩いた奥穂西穂縦走が懐かしく思い出される。
槍ヶ岳に至るなら北鎌も魅力的だが、末端の焼岳から西奥を経て至るのも面白そうだ。
大地の息吹を感じながら、穂高という山岳が形成された経緯を学びながら歩く。
これもまた違ったアプローチで興味深い。
雑話はこの程度に留め、西穂の主峰に向かい歩を進めよう。
個人的に際どかったのはここのトラバースで、日当たり抜群で緩み出していた。
気の抜けない高度を長時間横這うのは精神衛生上よろしくない。
ダブルアックスで早めに抜けた。
振り返ればこの絶景に気を取られるが、うっかり命まで取られないようにしよう。
トラバースを抜けてミックス帯に出合う。
ミスれば高度1000m下までノンストップだが、不安なら岩壁にルートを求めれば難は無い。
一通り抜け切れば近付いた縦走路と睨み合い、山頂へのビクトリーロードを詰める。
開始から8時間で山頂に立つ。
流石に疲れたが、素晴らしい景色が出迎えてくれた。
疲れも吹き飛ぶようだ。
乗鞍・焼岳・西穂へと続く稜線は雪を纏い、夏の長閑さとは違う印象を与えてくれる。
そろそろ始発組が独標に来る頃だろうか。
歩いてきた西尾根の稜線には一筋の足跡。ミルキーな笠を背にして。
振り向いた先に延びる吊尾根を歩いたのはもう1年半前。
唯一行けていない前穂高岳の頂に立つ日は来るのだろうか。
この時期賑わう霞沢岳も金剛石の輝きだ。
徳本峠の補修も今年中に終わってくれないかな。歴史の道をひた歩きたい。
山頂でのんびりしてると、独標からこちらに向かってくる人影も見えたので
そろそろ御暇しよう。
なるべく雪が緩んでいない所を拾いながらクライムダウンする。
独標付近は大渋滞で、登りと下りがごっちゃになってカオスな状態に。
人の顔を伺っていると一生帰れないのでさっさと下らせてもらう。
山荘に着いて一安心していると、誰かのテントが宙を舞って上高地へ飛んで行った。
テントを建てる前に道具を入れないとこういう目に合うのは明神で学んだ。
あそこもすっげー風だった。テン泊では過去一番だったかも。
満員御礼の小屋に入る気にならず、足早にロープウェイまで下山。
ロープウェイから眺める穴毛谷の壁は欧州の雰囲気がある。
お気に入りの景色を眺めて温泉に浸かり、夕方前に自宅へ到着した。
おわり。