アウトドアと飯のあれ

神奈川→富山在住のアウトドアと飯と旅行のあーだこーだ

明治期の立山登山を振り返る

ここ1週間で一気に肌寒くなってきました。あー寒い。

何ですか、暖秋かと思えば最後っ屁に帳尻合わせして、

しっちゃかめっちゃかじゃないですか。

思ったより秋晴れの日も当たりませんし…関東の日照りが恋しいです。

 

Toyama tower

雨や曇天の日は図書館で郷土資料を読んでいます。

市町村誌を始め、民話、山関係の古書、etc…。

どれも1冊家に置いておきたいくらいの興味深い話が記されていますが、

そのうちの1つ。

 

立山連峰誌料 (新興出版社): 1991|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

立山信仰・登山に関連する明治期の出版物が纏まっているのですが、

その中の大井冷光(信勝)著『立山案内』が面白い。

 

一言でまとめるなら『立山の総合研究書の起源』とも言うような内容で、

当時の立山登山の特徴から、国内有数の高山帯の詳細な気候・風土・信仰・植生に

至るまで事細かに記されています。

当時あったメジャールートの一部立山温泉も見られます。

 

 

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立山登山期は、毎年七月二十三日より、九月五日迄、四拾五日間とし(略)

登山者は近年著しく増加するが、一ヶ年約三千人位なるべし(略)

                                                                                  (大井冷光『立山案内』)

今の人が見ると「え?短っ、すっくな。」となりますね。

 

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従来立山参詣者の慣習として、煎粉(麦を煎りて挽き割り粉となせし者)を

携へ、山中清水を以て、之を解き砂糖を加へて食す、其味甚だ美なりと、

試に携帯するも可ならん、

                                                                                  (大井冷光『立山案内』)

山中にて甘いものを食す。当時の登拝者の細やかな楽しみだったのでしょうか。

 

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当時の持ち物はこのようになっていたそうです。

 

尚ほ大凡の品目を列擧せば左の如し。

金剛杖、草鞋(數足)、足袋、脚絆、毛布、襯衣胴巻、糸立(着茣蓙)、菅笠、

半紙、塵紙、水筒、水碗、齒蘑粉、齒蘑楊枝、石鹼、ナイフ、地圖、

磁石、時計、双眼鏡、綱、提灯、扇子、清涼剤、飯米(或いは食麭)、

砂糖(氷砂糖も良し)干魚、味噌、鑵詰、ブランデー、果物、手帳、等。

                                                                                  (大井冷光『立山案内』)

トレッキングポール、登山靴、靴下、ズボン、シェル、ツェルト、帽子、

ティッシュ、水筒、マグカップ…。

こうやって見ていくと今の所持品とさほど変わりはないですね。

 

半紙は、当時浄土山別山まで縦走する『三山かける』が

願いが叶う霊験あらたかなルートだと話題になったことと関係がありそうです。

 

 

別山山頂には硯ヶ池と呼ばれる、秋には涸れる水たまりのような池がありますが

熱心な登拝者はその水で写経を行ったという話や、

今でもその水を持ち帰って墨汁にし、護符に用いる宗徒の噂を耳にします。

 

iwase

現在は良くも悪くもオープンになり、多くの人が押し寄せる立山登山ですが、

こういった原生的な登山の空気感を味わってみたいなと強く思うようになりました。

 

 

 

菅笠と昔の服装で登山は少し興味あるんですよね、やってみたい。

草鞋で剱岳空海も諦めたほどなので、流石にそれはしないけど。

 

山を舐めるなおじさんに怒られない程度に、話のネタにでもできたらな、という話。